ルネサス エレクトロニクスは5月27日、産業機器における温度や圧力、流量などのアナログ信号を1チップで高精度に計測することを可能とした高精度アナログ・フロント・エンド(AFE)内蔵32ビットRXマイコン「RX23E-A」を発表した。
同製品の最大の特徴は、オフセットドリフト10nV/℃、ゲインドリフト1ppm/℃、RMSノイズ30nVrmsといった業界最高クラスの精度を実現したAFEをマイコンと同一のダイに形成したこと。これにより、従来、センサとマイコンの間で必要となっていた高精度AFE製品を減らすことが可能となり、部品点数や基板サイズの小型化などといったことを図ることができるようになる。
具体的には、既存のフラッシュ混載プロセスを用いて製造されるRX231をベースに、そこにAFE用のプロセスオプションとして、高精度な抵抗や容量の導入を図ることで1ダイ上での混載を可能としたという。
同製品がAFEとして搭載したのは、最大24ビット分解能のΔΣ型A/Dコンバータ(ADC)が2ch、最大128倍まで設定可能なレールツーレール入力PGA(Programmable Gain Amplifer)、プログラマブル励起電流源のほか、アナログ入力として最大6chの差動入力、最大11chの疑似差動入力、最大11chのシングルエンド入力(いずれも2chのADCの入力として使用が可能)を備えている。
同社では、産業機器においても、0.1%未満の誤差精度が求められるFAならびにプロセスオートメーション(PA)で活用される温度伝送器、差圧伝送器、熱式流量計、電子天秤、力覚センサなどといった分野がターゲットとなるとしており、派生シリーズと併せて2023年で10億円規模、2025年で30億円規模の売り上げを目指すとしている。
また、その派生品としては、今回はΔΣ型のADCであったが、振動センサなどより高速処理ニーズに向けた逐次型ADC搭載品やD/Aコンバータ(DAC)搭載品などを将来バージョンとして展開していく計画とする。実は型番もそれに沿った形で付けたとのことで、RX23Eという新シリーズでEは高精度アナログを意味し、Aは温度調節系という意味をそれぞれ持たせており、搭載されているアナログの違いにより、B、C、Dとシリーズが拡充されていく予定だという。
さらに、マイコンのコアも現状32MHz動作のRXv2世代のものであるが、将来的にはメインマイコンとの統合も考えられ、より高いパフォーマンスが求められるようになった際には同社ではe-AIと呼ぶ組み込みAIでの活用も含め、より高性能なRXv3といったコアを搭載した派生品の登場も考えられるとしている。
なお、同製品はパッケージが48ピンQFPならびに40ピンQFNの2種類用意されており、それぞれ動作温度および搭載メモリ容量の違いで合計8製品が現時点ではラインアップ。即日サンプル出荷が開始されており、2019年12月より同社川尻工場にて量産を開始する予定。この量産に併せる形で評価ボードの本格提供も開始する予定としている(現時点はルネサスからの貸し出しという形での対応とのこと)。