マンダムおよび医薬基盤・健康・栄養研究所(医薬健栄研)は5月28日、さまざまな感覚受容に関与する陽イオンチャネルファミリで、化学物質や温度などを感知して電気信号に変換するセンサとして知られるTRP(トリップ)チャネルの一種である「TRPM4」が肌細胞(表皮角化細胞)の免疫反応を制御していることを日本で初めて確認したことを発表した。
同成果はマンダムならびに医薬健栄研モックアップワクチンプロジェクトの石井健招へいプロジェクトリーダー(東京大学医科学研究所 教授)らによるもの。詳細は2019年3月に開催された「第9回アジア・オセアニア生理学会連合大会&第96回日本生理学会合同大会」において発表されたほか、9月末よりイタリアにて開催される「第30回 国際化粧品技術者会(IFSCC Conference)」においても発表される予定だという。
先行研究から、肌細胞では、ストレスや加齢、などの要因から、気づかないうちに炎症が発生し、乾燥したり、ハリが失われていくことが知られていた。また、炎症に関わる免疫反応についてTRPM4がコントロールしていることも別途分かっていたが、肌細胞においてTRPM4がどのような働きを担っているかについては良く分かっていなかったという。そこで今回、研究チームは肌の炎症とTRPチャネルの関連性に着目。TRPM4を活性化すると、肌細胞の免疫反応をコントロールできるのではないかと考え、研究を行ったという。
その結果、肌細胞のTRPチャネルについて、遺伝子およびたんぱく質の発現を確認したところ、TRPM4が検出されることを確認したほか、人工的に炎症を誘導することで、肌細胞から炎症性サイトカインが分泌される条件下において、TRPM4に既知の活性化剤(BTP2)を添加すると炎症が抑制されることを確認したという。
さらに研究グループはスキンケア製品への応用に向け、人体に使用可能な活性化剤の探索を実施。温泉成分などで知られる「アルムK」にその機能があることを発見。人工的に肌細胞に炎症を誘導した状態であっても、アルムKの添加により抑制できることも確認したという。
マンダムでは、温泉における美肌効果はTRPM4が関与している可能性が高いとするが、実際の製品としての展開としては、アルムKの再結晶化を防ぐ手法の考案や、保湿機能の担保など、まだ行うことがあるとのことで、それらの課題解決に向けて研究開発を継続して行っていく予定としている。
また、一方の医薬健栄研では皮膚の免疫機構やTRPチャネルと炎症の関係解明につなげていくことで、将来的に効果性が高く痛みの少ないワクチン技術への応用などにつなげていきたいとしている。