転移しやすく抗がん剤が効きにくい、といった「厄介ながん」の診断や治療につながる「ペプチド」を見つけたと金沢大学などの研究グループが発表した。ペプチドはアミノ酸が少数結合した物質。このペプチドを目印に使えば、厄介ながんの治療成績向上に活用できる可能性があるという。研究成果は17日付の国際科学誌「ネイチャー・ケミカル・バイオロジー」に掲載された。
研究グループには、金沢大学のがん進展制御研究所、ナノ生命科学研究所、新学術創成研究機構に所属する酒井克也助教と柴田幹大准教授、松本邦夫教授のほか、東京大学大学院理学系研究科の菅裕明教授、理化学研究所生命機能科学研究センターの向井英史ユニットリーダー、渡辺恭良チームリーダーらが参加した。
これまでの研究で、通常の細胞の増殖を促すだけでなく、がん細胞の転移や抗がん剤に対する薬剤耐性も促進する「肝細胞増殖因子(HGF)」と呼ばれるタンパク質があることが分かっていた。HGFは細胞の外に分泌されるタンパク質で、HGFの受容体となるタンパク質(MET)と結びつくことにより、組織の成長や再生を促す。このHGFががん細胞に作用すると、がんの転移や抗がん剤が効かなくなることを促す。酒井助教らは、菅教授が開発した方法(RaPID法)を使って、HGFだけに結合する環状のペプチド(HiP-8)を発見した。そして、HiP-8がHGFと結合するとHGFの働きを阻害することなどを突き止めた。
研究グループは、人間のがん組織を移植したマウスに目印を付けたHiP-8を投与。この目印を捉える装置で観察したところ、HiP-8はHGFの多いがん組織に集まることを確認したという。これらの研究結果から、酒井助教らは、今回見つけた環状ペプチドのHiP-8を、転移しやすいがんや抗がん剤が効き難いがんの治療や画像診断に活用できると期待している。
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