ベルギーimecは、ハーフブリッジ回路とドライバ回路をGaN-on-SOI基板上にモノリシックに集積したGaN ICを開発し、5月14〰15日にベルギーのアントワープで開催されたimec Technology Forum 2019にて展示実演デモを行った。
一般に、ハーフブリッジ(電力システムでは一般的なサブサーキット)は、特に高電圧用途では個別のディスクリート部品を用いてプリント基板上に製作されている。GaN-on-Si技術を使用してチップ上にハーフブリッジを実現することは、特に高電圧では非常に困難とされてきた。これは、GaN-on-Si技術で設計されたハーフブリッジは、ハーフブリッジのハイサイドスイッチに悪影響を与えるバックゲート効果、および制御回路を妨害するスイッチングノイズによって性能が制限されるためである。そこでGaNパワー技術の可能性を最大限に引き出すために、imecはハーフブリッジとドライバを1つのGaN-on-SOIチップにモノリシックに集積した。
これは、埋め込み酸化膜と酸化膜を埋め込んだディープトレンチ分離によって、パワーデバイス、ドライバ、制御ロジックデバイスを電気的に分離することができるGaN-on-SOI基板上に構築されたもので、この絶縁方式は、ハーフブリッジのハイサイドスイッチに悪影響を与える有害なバックゲート効果を排除するだけでなく、制御回路を妨害するスイッチングノイズも低減できるという。 imecのGaN事業開発マネージャーであるDenis Marcon氏は、「Siウェハの代わりにSOIウェハを使用すると、高価になると誰もが考えるかもしれない。しかし、従来のGaN-on-Siでは、いくつかのディスクリートデバイスを個別にパッケージしなければならない。しかもGaN高速スイッチング性能を向上させるために高度なパッケージを使用する必要がある。ボードレベルまたはパッケージレベルでドライバや他の回路に接続する必要がある。これに対して今回考案されたGaN ICでは、ドライバやアナログブロックなどを含むフルコンバータが1チップ上に形成されている。これは(周波数に敏感なコンポーネントはすでにオンチップで接続されているので)簡易なパッケージが可能である。これにより、最終的な電力システムのコストを節約できる」と述べている。
200mmファブでGaN-ICの受託試作生産を開始
imecは、ルーベンに有する200mm試作ラインにてMulti-Project-Wafer(MPW。さまざまな目的の異種のチップを搭載したウェハ)を用いたGaN ICの試作サービス(少量受託生産)を始めた。近いうちにショットキーダイオードやディプレッションモードHEMTなども加えてGaN-on-SOI基板上のモノリシックICプラットフォームを充実するとしている。
また、これらのモノリシック一体型電源システムの性能をさらに向上させるために、imecはショットキーダイオードやデプレッションモードHEMTなどの追加の一体型部品でプラットフォームを拡張することを目指しているという。
なお、imecのGaNパワーエレクトロニクス・プログラムディレクタであるStefaan Decoutere氏は「GaNを用いることにより、スイッチング速度、動作周波数、エネルギー効率が向上し、誘導性寄生成分の低減とフォームファクタの低減により、これまでにない性能を持つハイエンドパワーシステムが可能となり、再利用可能なエネルギー市場やコンシューマエレクトロニクス市場で電源へのGaN ICの採用が促進されることを期待している」と述べている。