Vicorは5月17日、都内で説明会を開催し、自社の電源ICを取り巻く市場の動きや、それに対応するための自社の取り組みなどの紹介を行った。
現在、同社が提供する電源ICの最新世代は第四世代となっており、各世代ともに独自のアーキテクチャにこだわることで高効率を実現してきたという。そんな同社の電源ICが活用される分野は幅広く、スーパーコンピュータ(スパコン)やデータセンターを中心としたHPC分野をはじめ、航空宇宙防衛、産業機器、鉄道、LED、通信、そして2018年よりオートモーティブ分野も注力領域に据えたという。
同社は、そうしたフォーカス領域に対し、それぞれに適したデバイスの提供を行っており、例えば人工知能(AI)の性能向上に向け、CPUやGPUの数が増加傾向にあるデータセンターなどには「Vertical Power Delivery(VPD)」という実装方法を提案している。
これは、プロセッサと同じ側面上に電源コンポーネントを配置するのではなく、サブストレートの反対側に搭載することで、高効率化を実現する技術。同社Corporate Vice President,Product Marketing & Technocal ResourcesであるRobert Gendron氏は「表面にスペースができるため、I/Oシグナルを邪魔することもなくなるため、設計の自由度を高めることにもつながる」と単に電力効率の向上だけではないことを強調する。
また、データセンター/スパコン向けとしては、24cm×15cm×1.5cmというタブレットサイズで3相AC入力、出力48VDC(定電圧)の10kW AC-DC電源ユニット「RFMシリーズ」も提供を進めている。タブレットサイズの電源ユニットということもあり、同社では「Power Tablet」という名称をつけている。内部には独立して動作する3つの電力変換セルを用意。これにより、3相AC入力のほか、単相入力として冗長性を持たせた運用といったことも可能だという。
一方、電動化が進む自動車分野については、自動運転での活用を見据えた「PowerStrip」の提案を進めているという。これは、入力がDC電圧で200~400Vに対応し、10種類の電圧を個別に出力し、合計で3.6kWの出力が可能な電源モジュール。1台の自動運転者につき、1モジュールでイメージセンサやLiDAR、AIプロセッサなどへの給田を可能にしようというもので、2019年7月より量産を開始する予定だとしている。
なお、同社では電源ICや電源モジュールに対する需要はさまざまな分野のエレクトロニクス化や電力効率向上ニーズに伴い、年々増加しているとのことで、工場の拡張を推進してきた。2018年はSMT実装ラインなどへの投資を進めてきており、製造能力は前年比で6倍増、出荷個数は同375%増と大幅に強化されたという。
しかし、それでもまだ今後の需要の増加には対応できないとも見ているとのことで、現在、本社工場の敷地に新工場の建設も計画。2020年第2四半期に竣工予定で、これにより製造ラインの床面積は従来比で2倍に増加する予定。同社では2020年の第3四半期からの生産開始を計画している。