米中貿易摩擦により、中国資本の2つのDRAM企業は明らかに減速の兆しを見せているが、中国のNANDメーカーであるYangtze MemoryTechnologies(YMTC)は従来の予定通りに64層Xtacking 3D NANDを2019年末までに量産する模様だ。同社について市場調査会社のTrendForceは、2020年に生産能力が拡大することで、世界のNAND市場に対して影響を与えるようになるとの予測を明らかにした。
TrendForceは、YMTCがすでに第1四半期中にも一部の顧客ならびにコントローラサプライヤにサンプル品を提供済みであると指摘している。武漢工場の建設を終え、限られた数の32層製品の生産から始めて、64層製品に切り替えて量産できるようになるのを待っている状態であり、事業拡大の第一段階として、中国市場での販売に焦点をあてているようである。
同社は2020年に生産規模の拡大を進め、少なくとも月産6万枚まで引き上げる計画としている。これは、月産20万枚を超える生産能力を有する他の競合メーカーと比較すると決して大きな影響を与えるものではないが、それでもNAND市場全体にとっては価格に対する下落要因となる可能性があるとTrendForceではみている。
TrendForceの分析によると、中国は半導体の自給自足体制の確立に向け、生産能力の向上を進めていくことは明らかである一方で、海外の競合企業も2020年以降における市場競争を優位に運ぶべく新工場の建設を進めている。Samsungは中国西安工場の第2期工事、東芝メモリは岩手の新工場、Micronはシンガポールの第3工場、そしてSK Hynixが韓国利川本社工場ファブM15の残りのスペースおよびそれに続くM16といったところである。これらの新工場の生産能力が上昇した後、再び価格競争が激化することが予想される。
96層をスキップして128層に挑むYMTC
NANDメーカー各社は92/96層製品の量産を開始しているものの、市場に流通する主流はいまだに64/72層製品である。92/96層のUFSならびにSSD製品は認定取得に向け、顧客に提供されている程度であり、それらの生産拡大は、市況の悪化もあり、一部の企業では移行する割合を鈍化させるといった動きも見られることから、2019年の市場に与えるインパクトは大きくないと見られる。
そうした先行企業に対しYMTCは技術的な差を埋めるべく、9X層ではなく、一足飛びに128層製品の開発に挑んでいるという。こうした取り組みが実を結び、実際に2020年中の128層製品の生産が実現されれば、将来的にはYMTCのNAND市場に対する影響は拡大することになるだろうとTrendForceでは説明している。