富士通は5月14日、同17日に開催予定の「富士通フォーラム2019」に先立ち、都内で記者会見を開き、目的指向型ビジネスの実現を支援するプロセス&フレームワーク「Design the Trusted Future by Data×AI」を策定し、グローバルに7月から順次適用すると発表した。
同フレームワークは、データとAIの融合的利活用により、社会課題解決やビジネス目的を達成するためにはプロセス全体を貫く目的と仮説設計が重要なことから、データやAI、さまざまな技術を手段として捉え、目的達成に向けたプロセスと合わせてソリューションやシステムインテグレーションに適用可能な各プロセスにおけるサービス・製品・先端技術をフレームワークとして提供する。
これにより、明確な目的と仮説を起点にData×AIの検証や学習を繰り返しながら全プロセスで効果を最大化し、成果を業務に適用するとともに定着化を図ることで価値創出が可能になるという。
富士通 AIサービス事業本部長 兼 データ利活用推進室長の渡瀬博文氏は「テクノロジーの急速な進化とともにコンピューティングは向上し、データは増加し続けている。しかし、データの活用は限定的であり、信頼性への懸念や効果的な分析は容易ではないことに加え、AIを実装している企業は少なく、人の判断には基準点が存在する」と指摘。
そのような状況を踏まえ、同氏は「成長している企業は目的・課題が明確であり、テクノロジーを用いて解を導き出している。そのため、目的を明確にし、具体的にどのように解決するのかということが重要であり、昨今では経営視点でも目的志向の重要性が高まっている。このような流れの中でDesign the Truted Future by Data×AIを打ち出す。グローバルプロジェクトからのナレッジをベースに開発したプロセスとフレームワークであり、業種・業務システム構築・サポートのノウハウから業務定着化を実現し、日本を含めたグローバルの研究拠点から先端技術を提供する」と、強調した。
同社では、業務実装と定着化による価値創出を実現する「Design the Trusted Future by Data×AI Process」と、データとAIの融合的利活用を支える「Design the Trusted Future by Data×AI Framework」の2つのスキームで提供する。
Processでは、具体的な目的や課題を明確化し、Data×AIによる効果的な実現手段を仮説設計する「(1)目的志向設定」、必要なデータに的を絞り効率良くデータを収集・流通・蓄積する「(2)データ準備」、データ精製・分析・効果測定により価値を追求する「(3)データ利活用」、業務適用・最適化・定着化により価値を創出する「(4)業務実行」の4フェーズで構成。
また、(3)データ利活用フェーズだけでなく、目的・仮説設定から定着までの全フェーズを支援するとともに、一部精度に課題があっても人による判断や作業と組み合わせて業務に部分適用しながら新たなデータ収集や最適化を行い、AIを学習・成長させることで確実な定着化を実現するという。
これにより、データ不足、データ資産の分散・増大、データ準備に要する時間、部分最適なプロジェクト推進などが原因でData×AIが実業務適用に至らないという多くの企業が抱える課題を解決するとしている。
さらに、業務実行する上で要となるData×AIのセキュリティやガバナンスを考慮した運用設計により、持続可能なData×AIを実現することに加え、プロセスの上流からセキュリティ設計を位置づけ、データ特性に応じて、匿名化や秘匿化などの人権上の配慮を踏まえた必要な対策を事前に取り込みセキュリティ対策を図るという。
Data×AIを構成する要素の一例として「欧州で展開しているデータ利活用サービス」「Wide Learning (ワイド ラーニング)」「LabelGear (ラベルギア)」の3点を挙げている。
欧州で展開しているデータ利活用サービスでは、共創を通じて定式化したデータ利活用のナレッジをもとにビジネスプロセスを高度化するヘルスケア(電子カルテ分析など)、セキュリティ(防犯対策分析など)、リーガル(契約文書分類など)分野に特化したサービスで、Fujitsu EMEIAが昨年11月に提供開始しており、Design the Trusted Future by Data×AI Processの全プロセスに適用する。
Wide Learningは、データから仮説をもれなく抽出することで、高精度な判断や新たな施策立案を支援する技術となり、富士通研究所が昨年9月に発表している。Design the Trusted Future by Data×AI Processで「仮説設計」「分析」「効果測定」のプロセスに適用。
LabelGearは、AI適用時に課題となるデータ整備をデータ解析を用いて効率化する欧州富士通研究所(Fujitsu Laboratories of Europe)の新技術。Design the Trusted Future by Data×AI Processにおいて、精製のプロセスに適用する。
一方、Frameworkは目的志向型ビジネス向けの体系として、上記の各プロセスに最適なサービス・製品・先端技術などのソリューションを適用した上でData×AIを実現し、各プロセスで蓄積されたナレッジをリファレンス化することで、目的に応じてカスタマイズが可能。
欧州で展開しているヘルスケア、セキュリティ、リーガル分野に特化したデータ利活用サービスをはじめ、グローバルで実績のあるソリューションも含めて体系化し、共通フレームワークでData×AIを推進するという。
加えて、世界中の研究開発拠点と連携し、すでに各国で実装が進みつつある先端技術を導入し、データ・AI領域の基礎・応用研究における先端技術の適用をグローバルに加速。そのほか、先端技術を各プロセスに積極的に導入し、プロセスそのものの自動化・効率化・生産性向上を図るとともに、各プロセスで蓄積したData×AIのナレッジを他のプロセスにも展開することで、全フェーズで生産性の向上を実現するとしている。
今後5年間で、Design the Trusted Future by Data×AIの全プロセスを適用したプロジェクト数100件、個別サービス・製品・先端技術の提供件数3000件を計画している。
また、グローバルでの体制強化、特に上流プロデュース機能を強化し、3000人規模に拡大することに加え、オープン戦略、グローバルでのスタートアップ・成長企業との協業を実施することでパートナーを50社に拡充する。さらに、社会課題解決が見込まれる場合、外部連携も検討した起業を推進し、スタートアップ3社の設立を目指す考えだ。