商船三井は22日、グループが運航する大型原油タンカー21隻にAR技術を用いた航海情報表示システムを搭載することを発表した。
システムは船舶を中心に航海機器や魚群探知機などでも知られる古野電気の電子海図表示装置「FMD3300」シリーズと連携。電子海図、方位、船速などの各種情報やレーダー情報をAR技術を用いてリアルタイム映像に統合表示することで操船者を支援する、まるでゲームで体験する戦闘機のコックピットのようなインタフェースを持つ航海情報表示システムとなっている。同社はこのシステムの動画をYouTubeで公開している。
同社は、昨年3月に竣工した上下動作可能な6層のリフタブルデッキを搭載する次世代型自動車運搬船「FLEXIEシリーズ」1番船"BELUGA ACE"と10月竣工の大型大型原油タンカー"SUZUKASAN"に試験搭載、AR表示画面の改良や効果検証を実施してきた。今回、古野電気が製品化するにあたり、最も安全運航が求められるVLCC(Very Large Crude Oil Carrier)船隊に搭載し安全運航を実現する旨を商船三井では発表している。
大量原油を乗せる大型タンカーは、沈み込んだ深さを表す「喫水」の制限から、船舶交通の多いマラッカ・シンガポール海峡では非常に慎重な操船が要求されるそうだが、今回のAR技術活用によりディスプレイ上に各航海計器からの情報をリアルタイム映像と情報を重ねて表示できるようになるため、どの船舶に注意を払うべきか?どこに浅瀬があるのか?を映像の中で同時に確認できるようになるとのことだ。 商船三井は2016年11月に「船舶維新NEXT~MOL SMART SHIP PROJECT~」を発表。高度安全運航支援と環境負荷低減の2つを軸に、技術開発プロジェクトとしてローンチしている。現在では普通に見る自動車が自走して船に入る自動車船を日本ではじめて「追浜丸」で実現した同社は、培ってきた要素技術とともにICTの力を加えて、今後も技術革新を行っていく構えだ。