脳の神経再生の実現を目指す創薬ベンチャーであるサンバイオは4月19日、2020年にこれまでの研究開発型のビジネスから、開発、製造、販売まですべてを備えた製薬企業への変貌を目指すことを明らかにした。
同日開催されたメディア向け説明会にて同社取締役社長の森敬太氏が、同社の再生細胞薬「SB623」が、外傷性脳損傷(TBI)による運動機能障害に対して治療が有効である可能性が示唆されたことなど、一定の効果が見込めることが見えてきたことを受けて示したもので、2025年までに当該分野で世界一の製薬企業となることを目指すという。
同社は2001年に創業。創業以来、脳神経の細胞再生に向けた研究開発に取り組んできた。そうして生み出されたのがSB623で、簡単に言えば生きた細胞を薬にしたもの。生きた細胞を用いているため、通常の低分子化合物による医薬品とは異なり、用途に応じて細胞にさまざまな機能を持たせて、当該部位の再生を促すといったことを可能とすることを特徴とする。
主なターゲットは脳だが、そのほか目や脊髄などの中枢神経を対象に研究が進められてきた。すでに外傷性脳損傷(TBI)ならびに脳梗塞における治験が進められており、TBIのフェーズ2の結果については先般、米サンディエゴで開催された米国脳神経外科学会(American Association of Neurological Surgeons:AANS)の年次総会において発表が行われ、有効性が示唆されたことを報告している。
この結果について森氏は「(1906年にノーベル賞生理学・医学賞を受賞した神経解剖学者であるSantiago Ramon y Cajal博士が損傷した生体哺乳類の中枢神経系は再生しないと言って以降)約100年の間、脳は再生しないと言われてきたし、治験を行う前に、いろいろな病院を回って説明などを行ってきたが、多くの医師からクレージーと言われたりもした。しかし、今回の治験の成果は、脳が本当に再生できることを示した最初の事例となった。これをもって、日本における承認申請の準備を進める」と事業化に意欲を見せる。
ただし、脳梗塞に関する治験結果はフェーズ2bにおいては、主要評価項目が未達であったことから、現在、さまざまな角度から分析を進めなおし、詳細解析を経て、継続して研究を行っていくとしており、今期中に試験デザインを行い、来期以降に改めて試験を行っていきたいとしている。
なお、森氏は、2020年以降の発展応用について、SB623が脳梗塞のほか、アルツハイマー病などの治療にも効果がある可能性があるとしており、SB623と平行して開発を進めているそのほかの細胞治療薬を含め、積極的な開発を継続して進めていくことで、「患者に1日でも早く薬を届けることを目指し、それにより企業価値の最大化を目指す」とする一方、開発から製造、販売まで自社で行っていく(日本での製造は、日立化成との間に2018年に業務提携を締結している)としており、販売部門や安全性を管理する部門、製造における品質保証部門など、組織としての拡充を図っていくことで、安全性や品質のコントロール手法の早期確立も図っていくとしている。