Samsung Electronicsは4月16日、EUVリソグラフィを用いた5nm FinFETプロセス技術の開発が完了し、顧客へのサンプル出荷に対応する準備が整ったと発表した。
同社のEUV 5nm FinFETプロセス技術は、従来の7nm FinFETプロセスと比較して、より革新的なスタンダードセルアーキテクチャを可能にするためにプロセス改善を行った結果、消費電力を20%削減しつつも電気的性能を10%向上したほか、ロジック面積効率も最大25%向上することに成功したとしている。
また、すべての7nm IPを5nmにも適用可能としており、これにより7nmを採用している同社の顧客が5nmへ移行しやすくなるため、移行コストの削減、検証済みの設計エコシステムの活用によるリソースの低減などをはかることができ、その結果、5nmの製品開発期間の短縮が可能になるとしている。
すでにSamsung Foundryとそのパートナー企業群で構成される「Samsung Advanced Foundry Ecosystem(SAFE)」は5nm向け設計基盤ツールとして、プロセス設計キット(PDK)、設計手法(DM)、電子設計自動化(EDA)ツール、およびIPについて2018年第4四半期から提供を開始しているほか、Samsung Foundryでは、5nmプロセスを用いたマルチプロジェクトウェハ(MPW)サービスの提供も開始したという
EUVによる7nmプロセスの量産を開始
2018年10月、SamsungはEUVリソグラフィ技術を用いた最初のプロセスノードである7nmプロセスを用いた生産を開始。2019年頭には7nmプロセスの本格量産対応を開始している。また、顧客の要望に応じてカスタマイズした6nmプロセスも開発しており、すでに特定顧客から最初の6nm品のテープアウトを受け取っていることも明らかにしている。
Samsungのファウンドリ・ビジネス担当エグゼクティブバイスプレジデントであるCharlie Bae氏は、「次世代製品を差別化するための高度なプロセス技術に対する顧客の需要に応えて、我々はEUV技術を用いた量産を加速するよう全力を尽くしている。EUVリソグラフィを活用した先端プロセスでは、5G、人工知能(AI)、高性能コンピューティング(HPC)、自動車などの新しい革新的なアプリケーションに対する需要が高いと予想している」と述べている。
Samsung FoundryのEUVリソグラフィを用いたプロセス技術を用いた製造は現在、韓国・華城(ファソン)工場のS3ライン(韓国器興、米国オースチンに続く3番目のシステムLSIライン)で行われているが、現在、そのS3ラインに隣接する形でEUV専用生産ラインの設置を進めており、2019年後半に完成、2020年からの生産開始を計画している。
TSMC、5nmのリスク生産を先行して開始
台湾の複数のメディアは、TSMCが台南サイエンスパークに新設したFab 18で5nmプロセスを用いたリスク生産(顧客がつかない状態での試験的な生産)を始めたと報じている。複数の顧客の5nmプロセスを用いたチップは年内にテープアウトするという。さらに同社は、近い将来、3nmプロセスによる量産もこのFab 18で行うことになっているという。
なお、TSMCはHuaweiの旗艦スマートフォン向けHiSiliconの最新モバイルSoC「Kirin 985」を「N7+」(EUVを採用した第2世代7nm)プロセスで2019年第2四半期に生産を開始し、Apple iPhone 2019年モデル向けA13プロセッサについては、さらに進化させた第3世代7nmプロセスともいえる「N7 Pro」プロセスを用いて第2四半期末までに生産を開始すると台湾の業界関係者は見ている。ちなみに、AppleがiPhone向けに5nmプロセスを採用するのは2020年モデルからになりそうだとのことである。
Intelが10nmプロセスの量産に手を焼いて未だに量産できていない状態の中で、EUVリソグラフィをフル活用した5nmの実用化競争は、TSMCとSamsungの2社に絞られてきた感があり、すでに両社による先端分野の顧客の奪い合いも始まっている。かつてEUVリソグラフィを用いたプロセス開発で先頭を走っていたIntelがどの段階でEUVリソグラフィを採用するのかが注目される。