Arm IoTサービスグループ データビジネス担当バイスプレジデント兼ジェネラルマネジャー 芳川裕誠氏

英Armは、カスタマーデータプラットフォーム「Arm Treasure Data eCDP」の機能拡張を発表した。その内容については、米トレジャーデータ共同創業者で、現在はArmでIoTサービスグループ データビジネス担当バイスプレジデント兼ジェネラルマネジャーを務める芳川裕誠氏が説明した。同氏の記者会見への参加はArmによる買収後初となった。

Armがトレジャーデータの買収を発表したのは、2018年8月のこと。トレジャーデータはビッグデータ分析のクラウドサービスを提供しており、Armはこの買収によって、デバイスからデータまで一貫して管理できるIoTプラットフォームを実現するという声明を出していた。

芳川氏は「Arm Treasure Data eCDP」の機能拡張のポイントとして、以下の3点を挙げた。

  • ナビゲーションのシンプル化を通じて、かつてないユーザー体験を実現
  • 連携機能の開発の迅速化、エンタープライズレベルの プライバシー管理機能の提供
  • 欧州におけるデータセンターの開設

芳川氏は「これまではデータ・サイエンティストにフォーカスしてきたため、データ・サイエンティスト向けのエクスピリエンスとマーケター向けのエクスピリエンスが分かれていたが、今回統合した」と説明した。

つまり、ナビゲーションがシンプルになったことで、単一のユーザーインタフェースで、エンジニアもマーケターも目的に適したデータ解析が行えるようになった。

  • 刷新された「Arm Treasure Data eCDP」のナビゲーション

連携については、Sansanと施策の連携を図ったほか、TapadとID統合の連携、Lookerとデータ可視化の連携が図られている。Tapadはクロスデバイス・マッチングを手掛けるベンダーで、同社との連携により、「オーディエンスを拡大しやすくなる」という。

欧州におけるデータセンターはセキュリティ基準の厳格なドイツに開設された。これまで、トレジャーデータは米国と日本でサービスを提供しており、欧州ではサービスを提供していなかった。昨年、EUでGDPR(EU一般データ保護規則)が施行されたことも踏まえ、欧州にデータセンターを構えた。同データセンターからは、欧州圏向けにセキュアなサービスを提供する。

芳川氏は、日本でもキリンやJTなどをはじめとした350を超える企業で、同社の製品が導入されている背景について、以下のように説明した。

「既存のプレーヤーはGoogleやAmazonのようにデータ基盤への投資が難しいうえ、GoogleやAmazonのようにデータ・サイエンティストを雇うことも簡単ではない。その一方で、GoogleやAmazonなど、破壊的な技術力を持つベンダーに対し、ディフェンスをしなければならない。われわれは、技術的にすぐれた強固なデータ基盤によって、既存のプレーヤーを支援できる」

芳川氏は、記者からの「Armによって買収されたことで、何が変わったのか」という質問に対し、「トレジャーデータは元々、テレマティクスや風力発電のモニタリングシステムなど、IoT事業に取り組んできたが、CDPとIoTは別のものととらえていた。Armと一緒になったことで、CDPとIoTがくっつきそうだと考え始めた」と答えた。

さらに、「トレジャーデータから見ると、人にまつわるデータであれば、すべてが対象となる。これまで、Armはデータに対して人としての視点はなかったが、今後、CDPを次世代のビジネスの柱としていくことを考えている。今後は、CDPとIoTのどちらから見ても、差別化したオファリングができそうだ。人とモノのデータが集まる場所としてのポジションを獲得していきたい」と語った。