キヤノンITソリューションズは画像処理技術やセキュリティ技術でもよく知られているが、車載制御システムやロボット制御、IoT機器のセキュリティソリューションなどのIoT分野でも様々なソリューションを展開している。

今回、毎年恒例の春のITイベント「第28回 Japan IT Week 春 前期」内の「第22回 組込みシステム開発技術展 春」で同社がそのソリューション群を披露していたのでレポートしよう。具体的には車載制御ソリューション、ロボット制御ソリューション、AI・画像処理ソリューション、組込みセキュリティサービス、品質検証サービスの五つの分野における最新のテクノロジーの展示を行っている。

  • 「2019 Japan IT Week春 前期」、キヤノンITソリューションズブースより

    「2019 Japan IT Week春 前期」、キヤノンITソリューションズブースより

今回、同社はブースのテーマとして自動車車載制御システムと産業機械のFA(Factory Automation)システムにフォーカス。それをささえるテクノロジーとして、AI・画像処理ソリューションと組み込みセキュリティ技術、そして、同社が長年培ってきた品質検証サービスを紹介している。

展示コーナでまず目に入るのが、RCカーを用いた同社技術のデモンストレーションだ。これは、RCカーに組み込んだ超音波センサーが壁を検出、制御技術で壁にぶつかることなく、中央の円のコースを周回するというもの。同社の障害物検知による自動停止技術、センサーを用いた操舵制御技術などが活用されている。

  • RCカーに組み込まれた超音波センサーが壁を検出、壁との距離を一定に保つように制御。これにより周りの壁にぶつかることなく中央の円のコースを周回することができる
  • RCカーに組み込まれた超音波センサーが壁を検出、壁との距離を一定に保つように制御。これにより周りの壁にぶつかることなく中央の円のコースを周回することができる
  • RCカーに組み込まれた超音波センサーが壁を検出、壁との距離を一定に保つように制御。これにより周りの壁にぶつかることなく中央の円のコースを周回することができる

これはデモンストレーションだが、実際に車載UI構築、車両通行管理システム、故障検知・診断、OBD(対応)などの車載制御システムソリューションで開発実績を残している。デジタルカメラをはじめ、産業機器や医療機器など広く製品開発支援を行う同社は、自動車業界のグローバルパートナーシップとなるAUTOSAR(AUTomotive Open System Architecture)準拠のソリューションに力を入れている。

同分野でSPF(Software Platform)を開発、主導する名古屋大学発ベンチャー企業、APTJ社のパートナーソフトウェア企業として参画。アプリケーションの開発支援、SPFの導入支援、SPFのインテグレーション支援など広く国産車載制御システム向けプラットフォームであるSPF分野のソフトウェア技術に取り組み、APTJが2018年にリリースしたAUTOSAR仕様準拠のSFP「Julinar SPF」のパートナーソフトウェア会社6社の一社として販売、導入支援を行っている。

  • キャノンITソリューションズの車載制御システムソリューションの実績
  • キャノンITソリューションの車載制御システムソリューションの実績
  • キヤノンITソリューションズの車載制御システムソリューションの実績

もう一つのコンセプトはロボット制御ソリューションだ。同社はグループ内外の産業機器の開発において自社で開発ロボットを製作しており、そこで培った技術が今回展示されている。今回の展示では、同社の小型ロボットによる模擬搬送のデモンストレーションが行われた。

  • アームロボットがブロックを台車ロボットに積み上げていく。すべて積み終わったら、黒い枠線にそって搬送ロボットが移動する。移動先では、台車ロボットからアームロボットが荷物を降ろしていく

    アームロボットがブロックを台車ロボットに積み上げていく。すべて積み終わったら、黒い枠線にそって搬送ロボットが移動する。移動先では、台車ロボットからアームロボットが荷物を降ろしていく

ポイントは、ロボットに搭載されるリアルタイムEthernet、EthernetPowerLinkとリアルタイムLinuxを活用した同社のリアルタイム通信技術。今回のデモ機では、搬送ロボットが操舵や加減速を指示された場合に発生する積荷の量、積み方による台車のふらつきを軽減するための搬送ロボットの動的軌道変更などにリアルタイム通信技術を確認できる。PCからの制御にはROS(Robot Operating System)に対応、RVizなどの可視化ツールで現在の状態を把握できるシステムだ。

  • ロボットアームは、積荷ブロックのカラー、位置、方向と搬送ロボットの位置や方向を画像認識で把握。これらの情報に対応してブロックの積み下ろしを行う。搬送ロボットは、Raspberry Piで作成され、リアルタイムLinuxを搭載。これによりリアルタイム通信が可能になっている
  • ロボットアームは、積荷ブロックのカラー、位置、方向と搬送ロボットの位置や方向を画像認識で把握。これらの情報に対応してブロックの積み下ろしを行う。搬送ロボットは、Raspberry Piで作成され、リアルタイムLinuxを搭載。これによりリアルタイム通信が可能になっている
  • ロボットアームは、積荷ブロックのカラー、位置、方向と搬送ロボットの位置や方向を画像認識で把握。これらの情報に対応してブロックの積み下ろしを行う。搬送ロボットは、Raspberry Piで作成され、リアルタイムLinuxを搭載。これによりリアルタイム通信が可能になっている

そして、今回の展示品でイチオシの製品がAI・画像処理ソリューション分野で出展された「AI Powered Vision System 5MGXMT ES」。このカメラシステムは現在まだ試作品の段階だが、その性能はAIが組み込まれたエンジンユニット、キヤノン製500万画素グローバルシャッターセンサーを搭載したカメラにNVIDIA製GPUを搭載。筐体は小型低発熱のファンレス構造を採用するなど、高機能でご覧の通りコンパクト。カメラとエンジンユニットのみで運用できる仕様になっており、カメラの制御や画像処理には開発用SDKが用意されている。顧客の環境に合わせたライブラリが提供されるという。

  • 参考出展である組込みAI・GPUマシンビジョンシステム「AI Powered Vision System 5MGXMT ES」。カメラユニットの寸法は、38mm×38mm×75.6mm。エンジンユニットは、79mm×79mm×135.3mmと小型。通信は、Ethernet、Wi-Fi、microSIM対応のLTEに対応している

    参考出展である組込みAI・GPUマシンビジョンシステム「AI Powered Vision System 5MGXMT ES」。カメラユニットの寸法は、38mm×38mm×75.6mm。エンジンユニットは、79mm×79mm×135.3mmと小型。通信は、Ethernet、Wi-Fi、microSIM対応のLTEに対応している

このカメラユニットに対応する同社提案のソリューションが「特殊素材の表面検査」と「部品検出・表面検査」の各ソリューションだ。特殊素材の表面検査では、カメラAIを活用して、特殊素材表面の複雑な不良個所を検出するもので会場では、実際にカメラを使ったデモでその様子を確認することができた。

  • 今回用意された特殊素材は、自動車業界注目の素材である熱硬化CFRPのUD材。素材上にある傷をAIが学習し、素材上の傷を検出しモニター上に表示する。500万画素の解像度でより細かい傷の検知が可能になる
  • 回用意された特殊素材は、自動車業界注目の素材である熱硬化CFRPのUD材。素材上にある傷をAIが学習し、素材上の傷を検出しモニター上に表示する。500万画素の解像度でより細かい傷の検知が可能になる
  • 今回用意された特殊素材は、自動車業界注目の素材である熱硬化CFRPのUD材。素材上にある傷をAIが学習し、素材上の傷を検出しモニター上に表示する。500万画素の解像度でより細かい傷の検知が可能になる

もう一方の部品の検出と表面検査ソリューションでは、500万画素のグローバルシャッターセンサーとGPUの高速画像処理を生かして、高速移動するベルトコンベアーに対応する部品検出や表面の検査が可能な高性能なものだ。実際のデモでも視認が難しい高速度においても部品を検出する様子を確認できる。"速さ"が生産性に活かされることを体験できた。

  • 設置されたデモ機の円盤部分をかなり高速に回しても、カメラは部品の画像を正確にとらえる
  • 設置されたデモ機の円盤部分をかなり高速に回しても、カメラは部品の画像を正確にとらえる
  • 設置されたデモ機の円盤部分をかなり高速に回しても、カメラは部品の画像を正確にとらえる

これら以外にもキヤノンITソリューションズのブースでは、暗号通信技術TLS 1.3に対応した組込みセキュリティソリューションのデモや、同社がソフトウェア開発会社として長年培ってきた品質検証サービスが展示されており、同社の最新のエンジニアリングのサービス・ソリューションをよく理解できる内容になっている。

  • 組込みセキュリティのブースでは最新の暗号通信技術TLS 1.3のデモが行われた。実際の白熱球の熱にセンサーが反応して筐体からTLS 1.3を使ってスマートフォンへ警告情報を送信する。TLS 1.3は、TLS 1.2よりセキュリティとスピードが大幅に向上している
  • 組込みセキュリティのブースでは最新の暗号通信技術TLS 1.3のデモが行われた。実際の白熱球の熱にセンサーが反応して筐体からTLS 1.3を使ってスマートフォンへ警告情報を送信する。TLS 1.3は、TLS 1.2よりセキュリティとスピードが大幅に向上している
  • 組込みセキュリティのブースでは最新の暗号通信技術TLS 1.3のデモが行われた。実際の白熱球の熱にセンサーが反応して筐体からTLS 1.3を使ってスマートフォンへ警告情報を送信する。TLS 1.3は、TLS 1.2よりセキュリティとスピードが大幅に向上している