小惑星「りゅうぐう」への着陸に成功後、りゅうぐう上空で待機していた日本の探査機「はやぶさ2」が5日午前、りゅうぐう表面に人工のクレーターを作るために「衝突装置」(SCI)を分離。この装置を使って地表面に弾を撃ち込めたとみられる。人工クレーターが計画通りできていれば、はやぶさ2は再度着陸し、世界初の試みとして小惑星の地下にあった岩石の採取を目指す。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が同日午後、SCI分離成功などを発表した。
JAXAのはやぶさ2チーム管制室によると、はやぶさ2は5日午前10時56分に、高度約500メートルまで降下して「衝突装置」(SCI)を分離。この装置は円筒形で底に丸い銅の板が付いた構造になっている。分離40分後にタイマー仕掛けにより爆発し、その勢いにより銅板は銅製の弾に変形。この弾がりゅうぐう表面に衝突して人工クレーターを作る仕組み。爆発による破片や岩石が飛び散ってはやぶさ2に当たらないように、機体をりゅうぐうの裏側に退避させた。
人工のクレーターを作る場所は2月の着陸地点から東に数百メートル離れた赤道付近。計画では直径最大10メートル、深さ1メートルのクレーターを作り、地下の物質を露出させる。衝突時の弾の速さは秒速2キロ、重さは約2キロ。条件がよければ直径数メートルのクレーターができるという。クレーター作りなど一連の実験が成功したことを確認できれば、はやぶさ2は5月にも再びクレーター内か周辺への着陸を試みる。そして地下にあった岩石の採取を目指す。
りゅうぐうなどの小天体には、地球では既になくなっている太陽系誕生時の痕跡が残っているとみられている。小天体の表面は太陽風などの影響で風化が進んでいるとみられる。このため人工クレーターを作って地下の岩石を採取するという。一連の実験は、衝突装置とは別に分離される搭載カメラで撮影し、はやぶさ2経由で地球上まで転送される。
はやぶさ2は、昨年6月に地球から3億キロメートル離れたりゅうぐう上空に到達。2月22日にりゅうぐうの赤道付近にある幅6メートル程度の狭い場所への着陸に成功、再び上空に戻り、今回の実験の準備をしていた。JAXAや会津大学などのチームは、小惑星りゅうぐうの上空からの観測結果から、りゅうぐうには水を含んだ鉱物があることが分かったと、3月19日付の米科学誌サイエンス電子版に発表していた。
この小惑星探査機は、世界で初めて小惑星から岩石を採取して地球に持ち帰った「はやぶさ」の後継機で重さは約600キロ。推進装置はイオンエンジンで、光学カメラやレーザー高度計など先端技術を駆使した機器類や着陸機を積んでいる。2014年12月に鹿児島県の種子島宇宙センターからH2Aロケットで打ち上げられた。地球とほぼ同じ軌道を周回した後打ち上げ約1年後に地球に最接近。地球の重力を利用する「地球スイングバイ」で方向を変えて太陽の方向に飛行を続け、昨年6月27日にりゅうぐう上空に到達した。それまでの飛行距離は約32億キロにも及んだ。今年11~12月までさまざまな探査を実施。探査終了後、地球への復路を飛行し、2020年末にオーストラリアの砂漠上に試料を収めたカプセルを落とす計画だ。
りゅうぐうは、地球と火星の軌道付近を通りながら1年余りをかけて太陽の周りを回っている1999年に発見された小惑星。はやぶさ2の観測でそろばん玉のような形をしていることが判明している。地球との距離は変化するが現在は約3億離れている。幅は約900メートル。先代のはやぶさが調べた小惑星イトカワの2倍ほど。水分や有機物を含む岩石が存在して原始太陽系の痕跡をより多くとどめているとされている。
関連記事 「はやぶさ2、遠い小惑星りゅうぐうに着陸 3億キロ以上離れた難作業に成功の快挙」 「『はやぶさ2』が『りゅうぐう』上空で放出した小型探査ローバが地表面の着陸に成功 ローバは世界で初めて小惑星表面を撮影」 |