国立天文台および理化学研究所(理研)、金沢大学などで構成される研究チームは4月3日、国立天文台のスーパーコンピュータ(スパコン)「アテルイ」および「アテルイII」を用いて、宇宙最大の爆発現象である「ガンマ線バースト」のスペクトルと明るさの相関関係が生じることを確認。ガンマ線バーストの主要な放射メカニズムの解明ならびに大質量星の爆発の過程を解き明かすことにつながる成果を得たと発表した。
同成果は、理研 開拓研究本部 長瀧天体ビッグバン研究室の伊藤裕貴 研究員、同 長瀧重博 主任研究員、理研 数理創造プログラムのドナルト・ウォレン研究員、金沢大学 理工研究域 数物科学系の米徳大輔 教授、リーズ大学 Faculty of Mathematics and Physical Sciencesの松本仁 Research Fellow、バデュー大学 Department of Physics and Astronomyのマキシム・バーコフPostdoctoral Researcherらによるもの。詳細は英国のオンライン科学雑誌「Nature Communications」に掲載された。
ガンマ線バーストの起源の一部は、大質量星が一生の最期に起こす大爆発の際に形成するジェットによると考えられているが、そのジェットからのガンマ線の放射メカニズムについては、良くわかっていない。
これまでに研究チームは、スパコンを用いて大規模シミュレーションから、ガンマ線バーストが起こる際は、ジェットに閉じ込められたガンマ線がジェットの膨張とともに解放されるという「光球面放射モデル」と呼ばれるメカニズムによりガンマ線が放射されることを強く示唆する結果を得ていたが、十分な精査は行われたこなかったという。
そこで今回、研究チームは、現実的な条件に基づいた光球面放射モデルの大規模シミュレーションを実施。その結果、ジェットが大質量星の内部から物質を突き抜ける際に形成する構造に起因して、ガンマ線バーストのスペクトルと明るさの相関関係が生じることを確認したほか、この相関関係が、ガンマ線バーストの観測から経験的に得られた「米徳関係」として知られているものであることも確認したとのことで、ガンマ線バーストの主要な放射メカニズムが光球面放射である可能性が高まったとしている。
なお、研究チームでは今回の成果について、長年の謎であったガンマ線バーストの放射機構の全容解明につながると期待できると説明しており、ガンマ線バーストの放射機構が確立することで、大質量星の爆発機構の解明つながることが期待できるようになるとしている。