サクラの代表的な品種であるソメイヨシノのゲノム(全遺伝情報)を解読したと、島根大学や京都府立大学、かずさDNA研究所(千葉県木更津市)の研究グループがこのほど発表した。研究グループは、遺伝子解析が進めば正確に開花時期が予測できる、と期待している。
サクラはバラ科に属する樹木で主に北半球の温帯に広く分布するが、美しい花を咲かせる種はアジア、特に日本に多い。日本だけをみても野生種やその変種から育成された栽培品種だけでも200種以上とされている。日本から米国ワシントンなどにも移植されて世界的に有名なソメイヨシノは、その成り立ちや開花時に働く遺伝子などについて多くの謎に包まれている。
研究グループは、島根大学・生物資源科学部附属生物資源教育研究センターの本庄総合農場(島根県松江市)のサクラ139品種とソメイヨシノの原木とされる上野恩賜公園(東京都台東区上野公園)の樹木の組織を採取してゲノムを解析した。
その結果、これまでの通説の通り、ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラという2品種を祖先に持つことが分かった。また、かずさDNA研究所がある千葉県木更津市鎌足地区に古くから伝わる鎌足桜はヤマザクラとオオシマザクラという2種の系統である可能性が高いことも判明した。
研究グループはまた、ソメイヨシノを構成する2種のサクラに対応するそれぞれ3億5000万塩基対のゲノムを解読。ゲノム配列から約95100の遺伝子を特定できて「ソメイヨシノの遺伝子地図」を作成した。今回解読できたゲノムは ゲノムの構造はオウトウ(サクランボ)やモモ、ウメとよく似ていたという。同グループによると、ソメイヨシノの2つの祖先種と分かったエドヒガンとオオシマザクラは552万年前に異種に別れたと推定でき、この2種が百数十年前に交雑によって再び一つになることでソメイヨシノが誕生したと考えられるという。
同グループは、開花前1年間の一ヶ月ごとと、開花前1ヶ月間の2日ごとのソメイヨシノのつぼみの解析を行い、開花に至るまでの遺伝子発現の変化を明らかにした。これらの研究成果から同グループは「(今後も研究を続けて)遺伝子解析が進めば正確に開花時期を予測できる」と期待している。
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