市場調査会社である英IHS Markitは、2019年のDRAM市場は、前年比22%減の770億ドルに留まること、ならびにDRAM価格の下落と需要の落ち込みは少なくとも第3四半期まで続くとの予測を発表した。台TrendForceは、先んじて2019年末までのDRAM価格の下落予測を発表していたが、市場予測そのものは行っておらず、DRAMに限った市場予測としては、今回のIHSの発表は珍しいものとなる。
IHS Markitの半導体担当アソシエイトディレクターであるRachel Young氏は「最近、Micron Technologyは、メモリの需要低迷に対処するため、DRAMとNANDのいずれも減産し、設備投資も削減すると公表したが、驚くには値しない。ほとんどの半導体メモリチップメーカーは、需要軟化に対処するため、多かれ少なかれ、すでに出荷数量と在庫水準のバランスを管理する対策をとっているからである」と述べている。
長期的に見れば、Amazon、Microsoft、Facebook、Google、Baidu(百度)、Alibaba、Tencentなどの超巨大企業のサーバDRAMに対する需要は大きくなるばかりであるため、サーバDRAMのビット需要は2018年、DRAM全体のビット需要の28%を占めトップであったが、2023年にはそれが50%以上に拡大する見込みである。ちなみにDRAM市場で2番目にビット需要が多い分野はスマートフォン(スマホ)向けであるが、スマホ市場は端末出荷台数とコンテンツの伸びが2016年以降減速しており、そのビット需要は、DRAM全体のビット需要の28%(2019~2023年の平均値)を占める見込みとなっている。
近い将来、年間の需要・供給の増加は前年比20%程度までに留まり、市場は全般的にうまくバランスが取れるとIHS Markitは予測している。しかし、サーバとスマホがDRAMの需要をけん引することから、供給過剰や供給不足が一時的に生じる可能性もあるという。
DRAMメーカーランキングトップ10にローム
また、IHS Markitは、2018年第4四半期の自社ブランドDRAMサプライヤ売上高ランキング・トップ10も併せて発表した。
DRAM業界は事実上、Samsung Electronics、SK Hynix、Micronの大手3社による寡占状態であるので、売上高が極めて少ない弱小企業まで含めたトップ10が発表されることはこれまでほとんどなかった。今回発表されたランキングの中では、10位にロームが入っているのが注目される。同社は2008年、OKIから半導体事業(OKIセミコンダクタ)を買収、現在もラピスセミコンダクタという社名で半導体事業を継続しているが、そこでOKI時代からのレガシーDRAMをごく少量製造し続けている模様だ。同社のDRAM売上高は、四半期で3~500万ドル程度でトップ3社の売上高の1/1000未満に過ぎない。
大減速となった2018年第4四半期のDRAM市場
ちなみに2018年第4四半期のDRAM市場は、前四半期比で20.2%減の222億ドルと大ブレーキがかかった。DRAM市場のトッププレイヤーは相変わらずSamsungだが、同社は同26.5%減と業績を落としているため、それよりも下落率の低いSK HynixとMicronがSamsungとの差を縮めた形となった。しかし、それでもSamsungはSK Hynixよりも8ポイント、Micronよりも16ポイント、高いシェアを維持している。
そんなSamsungだが、DRAMの大幅な価格下落が続き、厳しい半導体環境に直面していることを受け、2019年第1四半期(1~3月期)の売上高および利益が低下する見込みであることをすでに1月末に明らかにしている。さらに同社は3月20日に開催した株主総会で、株主から全社の営業利益の7割以上を稼ぐ半導体部門の失速を不安視する質問が相次いだ。そうした声を受けて、同社の金奇南(キム・ギナム)副会長は「メモリ事業をけん引してきたスマホ市場の成長鈍化により、2019年は競争が激化して難しい1年になる。(不況の時にこそ)研究開発の推進と大胆な投資で最高の競争力を保つ」と述べ、今後の成長のために向けた戦略を進めていることを強調している。とはいえ、目の前の利益が減少すること自体は避けられそうにないのは事実である。これは他社も同様であるため、Samsungだけではなく世界中の半導体企業にとって2019年はかじ取りがとても難しい1年になりそうである。