富士通は29日、業界やビジネス潮流などデジタル革新の動向や課題を纏めるFujitu Future Insightにおいて、デジタルとモビリティサービスをレポートする"モビリティの未来"(PDF/16ページ)を公開した。
紀元前4000年あたりには、風の力を使う帆船が人々を運び、1492年コロンブスのサンタマリア号は大西洋を横断、1825年には蒸気機関で最初の公共鉄道ロコモーション号が英国で人々を運び、ドイツのカール・ベンツとゴットリープ・ダイムラーが自動車を開発、米国のライト兄弟が有人飛行に成功。なぜ人は移動するのだろうか?と振り返るレポート。好奇心や利便性が必然的に人類のモビリティを変えてきた。今度の変化はどんな変化なのだろうか。
都市圏に本社を構える製造企業のジャックは通勤1時間ほどの郊外の自宅でテレワーク。出勤日は登録制の乗降スポットから自動運転バスをストレスフリーに乗換えながらオフィスに到着、午後からの訪問先への移動には、AIエージェントがロボタクシーを手配、タクシーに備えられた端末でチームと会議。自動車同士がコミュニケーションをしながら走行、乗り継ぎの次世代路面電車(LRT)は手のひらをかざすだけで乗車という快適な日々。現在の混雑する通勤や渋滞から見れば、甚だ待ち遠しいものだが、自動車業界を中心に急激に進む新たなモビリティの世界はこんな世界も夢ではないようだ。ビジョンは動画にも纏められている。
同社はシンガポール科学技術庁やSingapore Management Universityと研究組織を設立、ソリューションの共同開発を行っているが新たなモビリティサービスによって車の所有に関わらず、ストレスなく移動できる範囲が拡大していくことを述べている。自動運転やコネクテッドカーやシェアサービスの浸透は、交通情報やクラウドと連携し、都市全体の稼働率を最適化する方向に進んでいく。
レポートでは、ネットワークに繋がる交通手段や自動運転、所有利用へのシフトなどデジタルが深く関わる"モビリティ"の動向から6つの潮流に纏めている。
・「モビリティの都市化」:モビリティによる都市の再創
・「モビリティの民主化」:誰もが利用でき、提供できるモビリティ
・「物流のロボット化」:人が介在しないモノのモビリティ
・「体験価値としての移動」:移動をより楽しく、より魅力的に
・「移動しない移動」:物理的移動を代替するモビリティ
・「自然生態系に調和するモビリティ」:地球と共生するモビリティ
これらの潮流を踏まえた上で、同社は長年のICT技術の経験をもとにCollecting(データを集める)、Connecting(ネットワークにつなげる)、Utilizing(データを活用する)の3領域でモビリティ社会を支えていくことを述べている。
・Collecting(データを集める)
自動車から収集する大量かつ大容量な画像データを軽量化して送信する技術や、自動車に分散管理の上、必要なデータをセンター側からオンデマンドで収集する技術により通信とストレージにかかる費用負担を大幅に低減。
・Connecting(ネットワークにつなげる)
無線ネットワークを経由した車載ソフトウェアのダウンロードや更新技術により、安心安全なモビリティを迅速に提供。
・Utilizing(データを活用する)
車両や外部から収集した様々なデータをバーチャル空間に再現するデジタルツインの技術により、シミュレーションの強化を通じた各種機能の向上、改善を可能とし、開発段階における品質評価を高精度、かつスピーディーに実現。
待ち遠しい世界だが、技術とは別にルール作りや法整備、各社が得意な分野を持ち寄って持続可能な共創(Co-creation)が必要となる。レポートでは、持続可能で人々の生活が豊かになるモビリティ社会実現に貢献していく旨を述べている。