トレンドマイクロは3月27日、2019年度の事業戦略説明会を開催。この中で代表取締役社長 兼 CEOのエバ・チェン氏は、「世の中はすべてがつながるConnected Worldの時代に入っており、ITとOT(Operational Technology)が融合し、ドメインが重なっている。そのため、新しいサイバーセキュリティを提供しなければならない。それは、包括的な可視性(One Vision)、意味のある可視化だ」と語った。

  • トレンドマイクロ 代表取締役社長 兼 CEOのエバ・チェン氏

同氏がいう包括的な可視性は、さまざまな脅威情報を収集して、防御の施策を相互に連携させる「Connected Threat Defense(つながる防御)」を実現すること。

「脅威の全体像を理解すれば、多くの情報の中で重要なものが何かを理解し、それに向けたアクションを起こすことができる」(エバ・チェン氏)

これを受け、取締役副社長 大三川彰彦氏は、2019年は国内市場向けに、「事業プロセスに沿った組織横断型のセキュリティソリューションの提供」、「規模/業種に最適なSOC(Security Operation Center)支援」、「IoT関連ビジネスの推進強化」の3つの領域に注力する戦略を語った。

  • 国内市場向けの事業戦略

「事業プロセスに沿った組織横断型のセキュリティソリューションの提供」では、商品企画、開発、サービス、サポートという企業の事業プロセスに沿った組織横断型のセキュリティソリューションを提供するとした。

具体的には、商品の企画やサービスを提供する際に法人組織が利用するサーバやプラットフォームを保護するIT向けのセキュリティソリューション、工場などの業種特有環境を保護するOT向けのセキュリティソリューション、セキュリティリスクを可視化して対策案を提示するリスクアセスメントなどを提供。クラウド型セキュリティ技術基盤「Trend Micro Smart Protection Network」や脆弱性発見コミュニティ「Zero Day Initiative(ZDI)」などのスレットインテリジェンスを活用することで、より効果的なセキュリティ対策を講じることができるとしている。

  • 「事業プロセスに沿った組織横断型のセキュリティソリューションの提供」

トレンドマイクロ 取締役副社長 大三川彰彦氏

「つながる時代に入り、企業は商品企画からサポートまで、一環したプロセスの中でセキュリティを考えていかなければならない時代になった。商品企画向けでは、既存のIT向けのソリューション提供、開発・販売では従来の製品に加え新たな製品を出していく。さらに、サポートでは、ITとOTのインテリジェンスを統合した業種ことのSOCが必要になり、そこを支援していく」(大三川氏)

「規模・業種に最適なSOC支援」では、規模・業種ごとにSOC(Security Operaton Center)を提供している事業者を支援するという。

マネージドセキュリティサービスパートナー(MSSP)に、お客様の規模に応じた適切なセキュリティソリューションを提供し、ITとOTを含めたIoT環境のSOC支援を行う。具体的には、サイバー攻撃の事前予防(EPP:Endpoint Protection Platform)と事後対処(EDR:Endpoint Detection and Response)を統合し、法人向け総合エンドポイントセキュリティ製品「Trend Micro Apex One」や「ウイルスバスター ビジネスセキュリティサービス」をMSSPに提供する。

  • 「規模・業種に最適なSOC支援」

また、パートナー(MSSP、MSP、通信事業者)との連携を強化するという。

「通信事業者がキーポイントになる。ネットワークが変われば、セキュリティを提供するポイントも変わってくる。われわれは、今後、集中的に開拓していきたい」(大三川氏)

IoT関連ビジネスの推進強化では、「スマートホーム」「スマートカー」「スマートファクトリー」3つのIoT領域に注力する。

「スマートホーム」においては、、通信事業者向けに「Trend Micro Consumer Connect」を提供。家庭内にあるパソコン、スマートフォン、Webカメラ、ルータ、スマート家電など家庭内のさまざまなIoTデバイスに対する脆弱性を悪用した攻撃や不正サイトへアクセスする脅威をブロックする機能を提供。また、通信事業者に対してユーザのセキュリティ状況を把握するためのセキュリティダッシュボードを提供する。通信事業者はこれらを利用して、エンドユーザーにサービスを提供。トレンドマイクロはそのバックボーンを提供する。

  • 「スマートホーム」

「スマートカー」においては、自動運転・コネクテッドカーに対するサイバー攻撃を検出および防御するサイバーセキュリティソリューションを提供。カーナビなどの車載インフォテインメント機器(IVI)などに対するサイバー攻撃を防ぐIoT機器向けセキュリティソリューション「Trend Micro IoT Security」の提供に加えて、自動車産業におけるノウハウや知見をもったパートナーとの連携を強化することで、アクセルやブレーキなど自動車の走行を制御する車載ネットワーク向けのセキュリティソリューションを開発するとした。

  • 「スマートカー」

「2020年にスマートカー向けのSOCを提供すべく、Panasonicさんと共同開発を行っている。ただ、車に関してはサイクルが長いため、数カ月後にソリューションを提供するというわけにはいかない。地道に進めている」(大三川氏)

「スマートファクトリー」では、台湾の製造業向け機器ベンダーであるMoxa(モクサ)との合弁会社「TXOne Networks」を設立(予定)し、産業制御システム向けのセキュリティソリューションを提供する。具体的には、産業用ファイアウォール、産業用IPS、産業用ネットワーク全体を可視化するための統合管理ツールなどを提供する。開発は「TXOne Networks」が行い、販売はトレンドマイクロとMoxaが地域に応じてそれぞれが製品の販売を行っていくという。

  • 「スマートファクトリー」

  • 開発中の「スマートファクトリー」向けIPSのデモ機