飛行機に乗っているとき、ガタガタと揺れたり、機体が急にスーッと降下したりするのは、なにしろ地に足がついていないので、とても気持ちが悪いものだ。これはもちろん周りの大気に乱れ、つまり乱気流が生じているからなのだが、このさき地球温暖化が進んだとき、こうした乱気流は増えるのだろうか、減るのだろうか。

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    図1 旅客機の巡航高度で発生する晴天乱気流の将来変化。2040年前後の発生頻度を、現在に比べた増減率で示している。現在の頻発領域の北側にあたる北緯45度以北で増加が予想されている。(図はいずれも渡辺真吾さんら研究グループ提供)

晴天乱気流の増減予測では、その原因としておもに何を想定するか、そして2040年前後の海面水温の予測値の違いなどによって、増加率や増減する海域に違いが出てくる。おなじ秋でも、やはり日本・北米線がよく通るカムチャッカ半島の南方では晴天乱気流はかなり減るという別の予想も、渡辺さんらは出している。

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    図2 図1と同じだが、発生頻度の予測の仕方が違う。カムチャッカ半島の南方から北海道の東方にかけて大きく減少、西日本の東方海域で増加している。

科学では、とくに将来を予測する科学では、その結果が一つに定まらないのは、ごく普通のことだ。地球温暖化で100年後に予想される気温の上昇幅も、研究グループによって予測結果がずいぶん違う。想定する前提や条件が違えば結果は異なるし、予測の際に重視する事柄によっても、結果にずれが出る。科学とはそういうものだから、これをもって「科学的に結論がまだ出ていない」と対策を先送りにしていたのでは、いつまでたっても科学を社会の意思決定に使えるようにはならない。渡辺さんらが予測の対象期間にした2030~2050年は、もうすぐそこだ。しかもこれは、航空機の安全にかかわる問題だ。地球温暖化による2040年前後の変化についての予測研究は、最近になって続々と出ている。こうした科学の特質を踏まえたうえで、その知見を私たちの近未来の暮らしに最大限に生かす知恵と努力が、社会の側に早急に求められている。

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