東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は3月15日、「東京2020ロボットプロジェクト」を発表、第1弾企画として、トヨタ自動車とパナソニックのロボットを活用することを明らかにした。どちらも新規開発ではなく、真新しさは無いものの、そのほかにもいくつか計画を進めているロボットがあり、随時発表していく予定だという。
2020年の開幕まで、あと500日を切った東京オリンピック・パラリンピック(東京2020大会)。この大会は、「史上最もイノベーティブで世界にポジティブな改革をもたらす大会」をビジョンに掲げており、そのイノベーティブな取り組みの1つとして、ロボットの活用を推進、これまで、政府、東京都、有識者などが連携し、検討を進めてきた。
プロジェクトの狙いは、「大会を契機としてロボットの社会実装を推進し、日本と世界にポジティブな未来を提示する」こと。基本的には同年実施される「World Robot Summit」(WRS)に近いが、大勢の外国人旅行者も訪れる東京2020大会の期間は、ロボット技術をアピールする場として非常に有効だろう。
東京2020組織委員会・イノベーション推進室長の平田英世氏は、「世界が期待しているのは、日本のロボットはどうやって生活を支えて、どうやって生活に溶け込んでいるのかということ」とコメント。「東京2020大会では、次の世界に繋がるロボットを提示したい。世界中の人に、日本はここまで進んでいるということを見せたい」と期待した。
プロジェクトリーダーの比留川博久氏(産業技術総合研究所)は、「"面白いもの"ではなく、"役に立つもの"を見せたい」と、今回の狙いを説明する。
比留川氏は2005年の愛知万博でも、ロボット関連の展示に関わった経験があるが、世間が当時思い描いていたようには、ロボットの社会実装はまだ進んでいない。少子高齢化の進行による人手不足が深刻化しつつある現在、「役に立つロボット」は何より求められており、それを反映した形と言える。
トヨタ自動車は、「生活支援ロボットによる車いす席観戦サポート」を行う。使用するのは、「HSR」(Human Support Robot)×16台と「DSR」(Delivery Support Robot)×8~10台で、物品の運搬や観客席への誘導などを担当する。デモでは、車いすの利用者がタブレットから飲み物を注文すると、DSRが運んできて、HSRが手渡す様子が紹介された。
HSRは、ロボカップ@ホームリーグやWRSプレ大会などの競技会で使用された実績がある自律走行ロボット。1本のロボットアームを持ち、1.2kgまでの荷物を持ち上げることが可能だ。もう1つのDSRはHSRをベースに、用途をより運搬に特化して開発したロボット。すでに、Jリーグの試合会場において、実証実験をした例がある。
パナソニックは、「パワーアシストスーツを活用した運営支援」を行う。使用するのは、同社子会社ATOUNが開発した「MODEL Y」(AWN-12)×20台。重量のある飲食物の運搬や、大会関係者の荷物のバスへの積み込みなどの作業で活用し、運営作業スタッフの負担を軽減する。デモでは、500mLのペットボトル24本を軽々と持ち上げる様子が紹介された。
MODEL Yは、腰の動きをセンサーで捉え、モーターの力でそれを補助することで、腰への負担を軽減する装着型ロボットである。アシスト力は最大10kgfで、同社の試験では、腰の筋肉にかかる負担が10~40%軽減。荷物の上げ下げを20分間繰り返すテストでは、作業効率が20%向上したという。