私たちの太陽系には太陽のまわりを回る8個の惑星があって、地球は太陽に近いほうから3番目にあたる。ひとつ外側の火星までは岩石でできた硬い地面をもつ「地球型惑星」。その外側の木星と土星は、ガスが集まって球形になっている「巨大ガス惑星」。さらに外側の天王星と海王星は「巨大氷惑星」だ。いまから46億年ほど前、ガスやちりが太陽のまわりを回転する「原子惑星系円盤」の中で、これらが寄り集まって惑星は誕生した。
太陽系惑星の素性やでき方が詳しくわかっているのは、なんといっても私たちに近いからだ。火星と金星にはすでに着陸したことがあるし、水星、木星などは、ごく近くからの観測に成功している。太陽は、宇宙に数ある恒星のひとつにすぎないので、まわりに惑星を従えた太陽のような恒星も、たくさんあるはずだ。太陽系以外の惑星である「系外惑星」も、実際に数多く見つかっている。だが、これらの惑星系はあまりに遠い。中心にある星が太陽に似た恒星ならば、周回する惑星も太陽系とおなじようなしくみでできたのだろう。そう考えられているが、観測が不十分で確証がなかった。
国立天文台ハワイ観測所の工藤智幸(くどう ともゆき)研究員らは、「おうし座DM星」のまわりにできている原始惑星系円盤を高解像度で観測し、中心のDM星をちりがぐるりと取り巻いている「リング(輪)」を確認することに成功した。
DM星は、地球から光の速さで行っても約470年かかる位置にあり、その質量(重さ)は太陽の半分ほど。太陽は誕生から46億年が経過しているが、DM星は300万~500万年で、まだ若い。工藤さんらは、南米チリの標高約5000メートルにある国際協力の「アルマ望遠鏡」を使って、惑星のもとになるちりが放つ微弱な電波を観測した。
その結果、中心のDM星から3天文単位の距離にリングが新たに見つかり、これまでに発見されていた20天文単位の距離にあるリングや、60天文単位より遠方に広がる薄いちりも再確認できた。「天文単位」とは、地球と太陽の距離のこと。私たちの太陽系の場合、太陽から3天文単位、つまり太陽から地球までの距離の3倍の位置は火星と木星の間に相当し、そこでは無数の小惑星が浮かぶ「小惑星帯」が太陽を取り巻いている。20天文単位は天王星の位置。そして太陽系でも、30天文単位を超える遠方には、たくさんの小天体が散らばっている。リングを構成する無数のちりは、やがてまとまって惑星になる可能性がある。つまり、中心の星を幾重にもリングなどが取り巻いているDM星の原始惑星系円盤は、太陽系の成り立ちによく似ているのだ。
しかも、20天文単位にあるリングからの電波は、ぐるり360度どこも一様なのではなく、放射の強い部分があることがわかった。ここにはちりが多く集まり、惑星が作られやすい状態になっている可能性がある。この部分に惑星がすでにできているかどうかは、今回の観測では確認できない。別の手法による観測が必要だという。
この研究で、太陽系が若かったころとよく似た構造の「ミニ太陽系」が発見されたことになる。はたして他の惑星系も似た構造をしているのか。それは、いまのところわからない。だがこれは、生き物が住める「地球型惑星」が太陽系外にも広く存在するはずなのかどうかを考えるうえでも、重要なポイントだ。また、惑星ができつつあるころの46億年前の太陽系は、もう見ることができないので、DM星のような星をこれからいくつも観測していけば、私たちが住む太陽系の進化についても、もっとよくわかる可能性がある。今後の研究で観測例が増えていくのを待ちたい。
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