愛媛大学の研究者を中心とする国際研究チームは、地球から約130億光年ほど離れた場所に、83個の巨大ブラックホールを発見したと発表した。
同成果は、愛媛大学 宇宙進化研究センターの松岡良樹 准教授のほか、東京大学の柏川伸成 教授、プリンストン大学のマイケル・シュトラウス教授、マックス・プランク天文学研究所の尾上匡房氏、バルセロナ大学の岩澤一司 教授、台湾國立清華大学の後藤友嗣 准教授らによるもの。詳細は、米国の天文学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」など5編の学術論文として出版されている。
宇宙に普遍的に存在するブラックホールだが、宇宙の初期の時代にも普遍的に存在しているのか、存在していた場合は、どのくらいの存在密度なのか、といったことも含め、よくわかっていない。こうしたことを理解するためには、超遠方の宇宙にてクェーサーを探す必要があるが、これまでの探査では稀にしか発見されず、しかも見つかっても、現在の宇宙では珍しい最重量級の巨大ブラックホールによるもっとも明るいクェーサーに限られていたという。
今回、研究チームは、すばる望遠鏡の最新鋭の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(HSC)」が撮影した天体の中から超遠方クェーサーの特徴を示す候補天体を選出。すばる望遠鏡のほか、大カナリア望遠鏡、ジェミニ望遠鏡という3つの大口径望遠鏡を用いて、候補天体に対する集中的な追観測を実施することで、新たに83個の超遠方クェーサーを発見したという。
これらの超遠方クェーサーは、従来知られていたクェーサーの数%ほどの明るさの普通の重さの巨大ブラックホールであるほか、先行研究でスペクトルの報告がなされていた17個の候補天体も超遠方クェーサーであることを確認。合計100個(新発見83個、再発見17個)のクェーサーを発見することに成功したとする。
今回発見されたクェーサーはいずれも地球から約130億光年の距離にあるもので、研究チームでは、そうした若い宇宙でも巨大ブラックホールが普遍的に存在することが示されたとしている。
また今回の研究成果から、クェーサーの個数密度が判明。その結果、宇宙空間全体をプラズマ化できるほどの数のクェーサーが無いことが示されたため、初期宇宙で宇宙空間全体がプラズマ化する「宇宙再電離」を未検出の多数の超遠方クェーサーのエネルギーが引き起こしたという仮説が棄却されることとなったともしており、別のエネルギー源を推測する必要があるとする。
なお研究チームでは、今後、今回発見されたクェーサーは、世界中の研究者たちによる多面的な観測から、詳細な性質が明らかになっていくことが期待できる、とするほか、測定された個数密度や明るさの分布を数値シミュレーションの予測と比較することで、初期宇宙での巨大ブラックホールの形成・進化のプロセスに新たな知見を得ることもできるようになるとしており、さらに遠方での探査などを行っていくことで、巨大ブラックホールの誕生の経緯の解明などを進めていきたいとしている。