IDC Japanは3月11日、国内IoT(Internet of Things)市場におけるユースケース(用途)別/産業分野別の予測を発表した。これによると、国内IoT市場におけるユーザー支出額の2018年の実績(見込値)は6兆3167億円となり、その後は2018年~2023年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)13.3%で成長し、2023年には11兆7915億円に達すると予測している。
主要産業分野(13業種)のうち、個人消費者を除く12業種を比較してみると、予測期間を通じて組立製造、プロセス製造、官公庁、公共/公益、小売、運輸の支出額が目立っており、特に製造業の支出額が突出しているという。
下表は、世界のIoT支出額を5つの産業セクターに分類した上で、各セクターにおける2017年と2022年の地域別の割合を示しており、製造/資源セクター(製造業、建設業、資源業を合算したセグメント)における日本の割合は他のセクターよりも際立っている。これは、国内のGDPに占める製造業の割合が大きいことに加え、「Connected Industries」など製造業のIT化を通じて国力を高めていこうとする政策が要因となっていると指摘。
全産業分野の中で、個人消費者のIoT支出額の成長性は相対的に高い傾向にあり、2023年には組立製造に次いで2番目に大きい市場となり、国内外のB2Cビジネスに強みを持つ大手ベンダーを中心に深層学習(Deep Learning)などの高度なデータアナリティクス技術をIoTと組み合わせることで、スマート家電やスマートホームオートメーションといった分野での新サービスの創出に注力していることなどが関係しているという。
スマートホーム以外の成長性が高いユースケースとしては、農業フィールド監視、小売店舗内リコメンド、コネクテッドビル(照明)、スマートグリッド/メーター(電気)、テレマティクス保険などが挙げられる。これらは、2018年~2023年のCAGRで20%を超える成長が期待されている。
同社のコミュニケーションズ シニアマーケットアナリストである鳥巣悠太氏は「IoTに対する支出額は世界的に高い成長が見込まれるが、それらを産業分野/ユースケースの観点から地域別に比較すると、さまざまな特徴の違いが見られる。したがって、海外で今現在成功しているユースケースを国内向けにカスタマイズして取り入れることで、ベンダーの新しい収益につなげることが重要になる」としており、また「日本国内において特徴的なユースケースを海外へ水平展開すべく、国内と類似したニーズがある地域を模索することも肝心である。ユースケースの「輸入と輸出」を積極的に進めることが、ベンダーの収益拡大には必須になる」と述べている。