台TrendForceは、2018年の中国のパワー半導体市場が前年比12.76%増となる2591億人民元となったと発表した。内訳としては、ディスクリート製品が前年比14.7%増の1874億人民元、電力管理IC(PMIC)が同8%増の717億7000万人民元となっている。
新エネルギー自動車(NEV)や産業用電源制御システムなど最終製品市場の需要増、ならびにMOSFETやIGBTなどのパワー半導体製品の在庫切れや価格上昇のおかげでパワー半導体市場全体で2桁増の成長を遂げたとTrendFoeceは分析している。
2019年の中国パワー半導体市場は12%増の予測
TrendForceのアナリストであるRoyce Xie氏は、「米中貿易紛争やその他の不利な要因があるにもかかわらず、パワー半導体市場の規模は2019年も依然として拡大傾向にある。パワー半導体は、中国国内の需要が旺盛なため、ほかのIC製品よりも貿易紛争などの影響が少ない」と述べている。そのためTrendForceは、2019年の中国のパワー半導体市場は前年比12.17%増となる2907億人民元と予測している。
中国中央政府の外国製品を国内製品に取り替えるという方針と在庫切れに起因する価格の上昇のおかげで、中国内のパワー半導体サプライヤの多くが好調な業績をあげており、今後も成長が見込まれている。そのような急成が続くサプライヤの1つがBYD Microelectronicsで、最終製品の優位性により中国の自動車用IGBT市場で20%以上の市場シェアを獲得し、売上高で中国の上位3社入りを果たした。 MOSFETサプライヤのSino-MicroelectronicsとYangjie Technologyも、売り上げを大きく伸ばし、徐々にIGBT市場に参入し始めている。
複数の300mmウェハ対応IGBTラインが建設中
中国では、複数のIGBT生産ラインがすでに建設に着手もしくは建設予定となっている。Silan Microelectronicsはアモイで300mmウェハを用いた生産ラインを建設中である。China Resources Microelectronicsも、重慶で300mmラインを建設中である。そして、GTA Semiconductorは自動車用グレードのプロ向けIGBT生産ラインを建設中である。
併せて、いくつかのパワー半導体サプライヤはシリコン以外のSiCなどの新たな材料を用いたデバイス開発に取り組んでいる。BASiC SemiconductorはすでにSiC MOSFETを製造し発売している。ファウンドリであるSanan Optoelectronicsも、SiC生産ラインを開設し受注を始めている。BYD MicroelectronicsはSiC MOSFETの開発に成功しており、2023年までにシリコンベースのIGBTをSiC MOSFETに完全に置き換えることを目指している。
NEV特需が牽引する中国のパワー半導体市場
最終需要の観点から2019年を見据えると、NEVは依然として中国のパワー半導体市場における最大の需要源となっている。TrendForceの統計によると、中国は2019年に前年比45%増となる150万台のNEVを生産すると予測されている。それに伴って、先進運転支援システム(ADAS)、電気制御および充電ステーション向け需要が中国パワー半導体市場を270億人民元ほど拡大させる見込みだという。
また、5Gでの接続を確立するために必要とされる基地局装置、そしてその結果としてもたらされるIoTならびにクラウドコンピューティングの普及は、パワー半導体市場に対する需要を長期間にわたって牽引することが期待されているほか、産業分野の自動化ニーズも継続することから、それに関連する電源やコントローラ、駆動回路などに必要とされるパワー半導体に対する需要も引き続き続く見込みだという。
パワー半導体の供給不足はしばらく継続
供給面では、2019年中に新たに3つないし5つのパワー半導体向け製造ラインが量産を始める見通しだが、TrendForceの予測によると、2019年第3四半期末までにパワー半導体製品の在庫不足が大幅に改善する可能性は低いという。そのため、いくつかの半導体サプライヤは製品価格の引き上げを継続して行っていく可能性があるという。また、技術開発の面では、SiC MOSFETが自動車分野でシリコンベースのIGBTを置き換えていく可能性があり、結果としてシリコンベースは低電力・高効率指向の新規アプリケーションに向けた開発にシフトしていく可能性が高いとしている。