TrendForceは2月27日、2018年のファブレス半導体企業の売上高ランキングトップ10を発表した。トップは米Broadcom、2位に米Qualcomm、そして3位には米NVIDIAと、トップ10すべての順位が2017年と比べて変動しないという結果となった。

  • ファブレス半導体メーカーの2018年売上高ランキング

    ファブレス半導体メーカーの2018年売上高ランキングトップ10 (出所:TrendForce)

TrendForceのシニア業界アナリストであるYao Chia-Yang氏は、「トップ10のうち、スマートフォン(スマホ)向けICの比重が大きいQualcommとMediaTekの2社だけが、スマホの需要低迷の影響を受ける形で売上高を前年比で減少させる結果となった。Qualcommの減収は、Appleが新しいLTEモデムをIntelに切り替えた影響に加えて、Huaweiが自社ブランドのKirinプロセッサの採用比率を増加させた影響もあるとみられる。一方のMediaTekは製品ポートフォリオとコスト構造の調整を継続していったことで、売上高の減少をわずかにとどめることに成功した模様だ」と市場の動向を説明している。

20%台の高成長を達成したNVIDIAとAMD

スマホ依存の強いQualcommとMediaTek以外がプラス成長となったわけだが、これは通信インフラやデータセンター、テレビなどスマホ以外の市場が着実に成長した結果と見ることができ、その恩恵を受けた企業としては、Broadcom、NVIDIA、AMD、Xilinx、Novatek、Realtekといった企業が挙げられる。また、企業買収による売上高の底上げを図ったのが、MarvellとDialog Semiconductorとなっている。

中でもAMDは前年比23.3%増と、成長率はNVIDIAの同28.4%増に次ぐ2位と大きく伸ばすことに成功した。主力のCPUやGPUが好調で、これらの製品群の売上高は同38.6%増の41億3000万ドルであったが、同社はTSMCの7nmプロセスを採用した製品を増加させていくと見られ、2019年も成長が期待されている。

しかし、半導体業界全体を見ると、2018年第4四半期にメモリバブル崩壊の影響から、NVIDIA、Marvell、Dialog Semiconductorをはじめとする多くの企業の業績が当初予測より低くなってしまうという結果となった。特にNVIDIAの場合、売り上げの約半数がゲーム分野からによるものだが、その売り上げが大きく落ち込んでおり、市場予測には届かなかった。同社のゲーム向けグラフィックスカードの在庫レベルは完全に一掃されたとは言える状態ではまだいえないため、通常の在庫レベルに戻るまでにはしばらくかかるとの見通しである。

2019年は踊場の年となる可能性も

Yao Chia-Yang氏は、「2019年を見据えると、スマホ市場の成長率は継続的に低下し、5Gや折りたたみ式スマートフォンはホットトピックスに過ぎず、これらの製品出荷数と普及率は極めて限定的にとどまる見込みである。このほか、グローバルの市場環境の悪化など、さまざまな要因によってこれらトップ10のファブレス企業の業績は前年比でマイナスになる可能性がある」と予測している。

その背景だが、低調なスマホ市場においてHuaweiが積極的な攻勢を仕掛ける姿勢を見せており、仮に同社の販売台数が伸びると、他のスマホOEMの販売台数の伸びは停滞するため、QualcommおよびMediaTekのスマホ向け半導体の売り上げが影響を受ける可能性が高いとしているほか、サーバ市場の成長率も、大手CSP(コンテンツサービスプロバイダ)のデータセンター増設が一巡したこともあり、2018年を下回るとも予測していることにある。

さらに、米国の保護主義的な政策の推進と米中貿易紛争の影響も考えると、自動車市場など、ほかの市場も低調になる可能性があるともしており、こうした複合的な要因の結果、2019年のファブレス半導体企業の業績は比較的慎重に見る必要があるとしている。