ベルギーimecは、米カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたリソグラフィに特化した国際学会「SPIE Advanced Lithography conference 2019(SPIE 2019)」において、EUVリソグラフィ(EUVL)によるパターニングプロセスへの逐次浸透合成(sequential infiltration synthesis:SIS)の適用結果について報告を行った。

これにより、EUVリソグラフィ後にSISを適用することにより、フォトレジストパターンのラフネスやウェハ表面に確率的に存在するナノ欠陥を削減することができ、将来の超微細パターン形成にEUVが適用できるめどが立ったとしている。

SISは、自己組織化リソグラフィ(Directed Self-Assembly:DSA)にてすでに利用されているが、imecは今回、EUV装置を用いた微細パターン形成プロセスにSISを適用し、フォトレジストに無機元素を浸透させることで、従来以上に硬化させることに成功、パターニング性能を向上させたという。

  • EUV

    今回の研究開発に用いられた、imecのクリーンルームに設置されているASML製のEUVリソグラフィ装置 (出所:imec)

今回、imecと開発パートナーであるASMおよびASMLは、EUVL-SISと標準的なEUVLパターニングプロセスを比較し、パターンのラフネス、ナノ欠陥が緩和されていること、ならびに局所バラつきに関するSISの有用性を検証。TiN膜へのパターン転写に際してSISステップを追加することで、SISなしプロセスと比較して、局所的なクリティカルディメンジョン均一性(Local Critical Dimension Uniformity:LCDU)について60%、ラインエッジラフネスについて10%の改善が確認されたという。また、ナノブレイク(典型的な確率的に存在するナノ欠陥)の数は、少なくとも1桁の減少を確認したほか、ロジックチップの不良率が20%減少したとも報告している。

  • EUV

    EUVリソグラフィ露光後のフォトレジストパターンの断面TEM像(左)とSIS工程後のフォトレジストパターン中のアルミニウム(Al)のTEM EDX信号(右) (出所:imec)

imecの先進リソグラフィチームのディレクターであるGreg McIntyre氏は, 「この成果はEUVLおよび計測インフラ、ならびにプロセス制御、材料およびエッチング研究の分野における最近の進歩をすべて取り入れた成果である」としており、これにより3nmおよびその先への微細化に進む道が開けたと述べている。

高NA EUV時代へ、レジストの化学変化をリアルタイム解析

またimecは、高NA(0.55)EUVLで得られる300mmウェハ上の8nmピッチのレジストパターンのイメージングとアト秒~ピコ秒でリアルタイム高速解析を行う研究室(ラボ)を米KMLabと設立し、その成果の一部についてもSPIE 2019にて報告している。

この研究は、EUVLで放射されるフォトンのフォトジストへの吸収およびその後の化学変化の様子をリアルタイムで高速に観察・分析することで、今後のフォトレジスト開発につなげていくことを目的としており、将来的には、フォトレジスト内で短時間内に生じる化学変化だけではなく、二次元材料、ナノ構造システムおよびデバイス、量子材料などの複雑な材料およびプロセスのナノスケール超高速解析を可能にするものとなるとimecでは説明している。

なお、imecはASMLとEUVの実用化と、さらなる微細パター二ングの研究開発で協業を進めており、高NA(NA=0.55) EUV露光装置「EXE5500 High-NA試作機」の導入準備を進めているが、同装置が導入されるよりも前に、すでにクリーンルームに設置済みのEUV露光装置「NXE:3400B」(NA=0.33)に、KMLabの複数のレーザー光同士を干渉させることで、干渉縞を形成し、それで生じるパターンをフォトレジスト内に形成することで、マスクなどを用いずに形成したいパターン形状を変化させることができるレーザー干渉リソグラフィ機能を組み合わせることで、NA=0.55のEUVLに相当する微細なレジストパターニングプロセスならびにレジスト材料の研究開発を進めていくとしている。