LeapMindは2月27日、都内でディープラーニングのエッジ分野での活用などの紹介を行うプライベートセミナー「Edge Deep Learning Summit (EDLS)2019」を開催。同会場にて現在、エッジ市場向けに独自のディープニューラルネットワーク(DNN)プロセッサを開発していることを明らかにした。
IoT機器の普及などを背景に、無数のエッジデバイスがネットワークに接続される時代。すべてのデータをクラウドに送り、人工知能(AI)を活用して、何らかの知見を得ようとすると、トラフィック量が膨大な量になる、通信に時間がかかる、などの問題が生じることから、この数年で、エッジデバイス側にインテリジェントを持たせ、その場で推論を実行させたい、というニーズが急速に高まりを見せてきている。
しかし、その実現には消費電力、コスト、処理速度、精度、通信環境の維持などさまざまな課題を解決する必要がある。同社のDNNプロセッサは、こうした課題の解決を目指して開発が進められているもので、ターゲットとしてはプロセッサ単体で1~2W程度(最大でも4W)の電力で、マチュアなプロセスを採用することによる低コスト化の実現を目指している。
また、性能としても、畳み込み計算の数値精度は、1要素を表現するために割り当てるビット数を2ビットという極小化することで既存手法よりもいささか下がるものの、それを補う方法を採用することで、実用に耐えられるレベルを実現するとしているほか、浮動小数点演算をサポートしないことで、回路面積を抑えつつ、高速化も図れるようになるとしている。
また、実チップとして提供するのではなく、回路IPとして提供していくビジネスモデルを採用する。すでに半導体ベンダや産業機器ベンダなどを中心とするパートナーとも話を進めている段階にあるとするが、具体的な回路デザインの詳細については2019年6月ころ、ビジネスモデルの詳細などについては同9月から年末までには情報公開をしたいとしている。
これに加えて、CPUやFPGA上で量子化ニューラルネットワークを扱うことを可能とする「Blueoil」も2018年10月にオープンソース化して以降も社内で開発を継続しており、現在、XilinxのZynq UltraScale+ MPSoCへの対応を目指した開発を進めるなど、エンジニアを中心に採用活動を活発化させており、2021年までにソフトウェアならびにハードウェアエンジニアを中心に300名規模に人員を拡充していく計画を掲げている。
なお、同社の代表取締役CEOを務める松田総一氏は、セミナーの最後、挨拶に立ち、「LeapMindのミッションはあらゆるエッジデバイスをインテリジェント化することだが、自社で製品を持つことなどはしないため、その実現のためには1社ではできない。システムの設計などを含め、パートナーやお客様と一緒に作っていくべきだと思っている。そうした同じ思いを持った企業や、エッジデバイスを活用したいというお客様に向けてエコシステム的に、技術移転なども行っていくことで一丸となってエッジAI市場を立ち上げ、その市場は日本の産業が強い分として盛り上げて行きたい」とコメント。将来にわたって、ソフトウェアからハードウェアまで一気通貫となるソリューションを揃えていくことで、エッジAI市場の発展につなげていきたいとしていた。