九州大学や国立天文台で構成される研究チームは2月26日、アルマ望遠鏡を使ってオリオン座にある原始星MMS5/OMC-3から両極方向に噴き出す高速で絞られたガス流と低速で広がりを持つガス流の分布を詳細に観測。その結果、これら2種類のガス流のメカニズム解明につながる成果を得ることができたと発表した。
同成果は、九州大学の松下祐子 大学院生と同 町田正博 准教授、国立天文台の高橋智子 助教(総合研究大学院大学)、同 富阪幸治 教授(総合研究大学院大学)の研究チームによるもの。詳細は、天文学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載された。
星は宇宙に漂うガス雲がみずからの重力によって収縮することで誕生するが、その初期である原始星は、その重力によりさらに周囲のガスをひきつけていくことで成長することが知られている。また、原始星に引かれて落下してきたガスの一部は、極方向に一般に低速(アウトフロー)もしくは高速(ジェット)のガス流として噴き出すことも知られていたが、それがどのように作られるのかの仕組みについては、「原始星周辺から噴き出す高速のジェットが周囲のガスを巻き込みながら進むため、巻き込まれたガスがアウトフローとして見える」という説(巻き込み説)と、「高速のジェットと低速のアウトフローは原始星周辺の別の場所から独立に噴き出す」という説(独立説)の2つの説をめぐって議論が続けられてきた。
今回、研究チームは、アルマ望遠鏡を用いてオリオン座にある原始星MMS5/OMC-3を観測。原始星から東西方向に噴き出すガス流の構造を詳細に描き出すことに成功したほか、ガス流の速度分析から、低速のアウトフローと高速のジェットが存在することを確認。これらアウトフローやジェットの長さと速度を逆算したところ、ジェットはおよそ500年前、アウトフローはおよそ1300年前に出始めたこと、ならびに観測結果からアウトフローとジェットが放出される方向が17度異なっていることなどを見出すことに成功したという。
これらの観測結果から研究チームは、ジェットとアウトフローはそれぞれ独立に、原始星周辺から噴き出している可能性が高い、ということから、独立説であれば説明できるとしているほか、先行して町田 准教授が行っていた独立説に基づくシミュレーション結果ともよく一致したとしている。
なお、今回の成果について研究チームは、ジェットが噴出した直後の現象を捉えたことで、アウトフローとジェットそれぞれの噴出のメカニズムを考察することが出来たとしており、今後は、他のアウトフローとジェットが同時に見られている天体との比較や、アルマ望遠鏡でのより高解像度な観測・磁場の観測を取り入れることで、より詳細なジェットとアウトフローの内部構造の解明を行っていきたいとしている。