SAPジャパンは2月21日、記者会見を開催し、代表取締役社長を務める福田譲氏が就任5年目を迎えた2019年のビジネス戦略について説明した。
福田氏は2018年のグローバルの実績について、クラウド事業が前年比38%増と好調だったが、今はキャッチアップの状況であることから、さらに成長が期待できると説明した。
「ヒト・モノ・カネをクラウドでリーチできるようにするためにコア領域を拡張することで、企業のビジネスをエンド・ツー・エンドでサポートしていく」(福田氏)
SAPジャパンのビジネスに関しては、2018年に9億8900万ユーロの総売上を達成しているが、福田氏が社長に就任した2014年から4年間で53%の成長を遂げており、「グローバルを上回る成長率」(福田氏)だという。
続いて、福田氏は2014年の社長就任会見において発表した施策の進捗状況について説明した。
フォーカスするインダストリーとしては、「公益」「自動車」「保険」が挙がっていた。以前、顧客を業種で分類すると、製造業と非製造業の割合が7対3だったが、今では非製造業のほうが多いという。ただし、「保険の取り組みは少し遅れている」と福田氏は語っていた。
クラウド事業においては、人事や購買などのSaaSへのシフトが予想していたよりも早かったという。福田氏は「グローバルではクラウドがオンプレミスを逆転している。日本はそこまではいっていないが、新規の取引の3分の1がクラウドによる導入という状況にはなっている」と説明した。
そして福田氏は、2019年の重点ビジネス戦略として、「次世代企業ITアーキテクチャとしてのインテリジェントエンタープライズの普及」「日本型デジタル変革のフレームワーク作り」「協働イノベーション」を紹介した。
次世代企業ITアーキテクチャは、AI・機械学習・IoTをシステムに組み込んだ形で提供する。例えば、「インテリジェントエンタープライズ」では、気候に合わせて、その日中に在庫を最適化するといったことを可能にする。
福田氏は、日本でイノベーションを創出するにあたっては「People」「Process」「Place」という3つの課題があり、これら3つのPを変えるためのパッケージングの構築を目指すと述べた。
SAPは2月1日、三菱地所と共同で、協働イノベーションを実現するための施設として、施設「Inspired.Lab」を立ち上げた。「Inspired.Lab」では、大企業におけるイノベーション部門の「出島」や「特区」として、企業の枠を越えた場を提供し、大企業とスタートアップのコラボレーションを生み出し、より変革が加速していくエコシステムを構築していく。
福田氏は、これら3つの戦略を具現化している例として、トラスコ中山の新サービス「MRO STOCKER」を紹介した。同サービスは、富山の置き薬ならず「置き工具」版で、建設現場に備品や消耗品を置いておくことで、必要な時に必要なものをすぐに購入できる仕組みだ。
トラスコ中山は、小松製作所、NTTドコモ、オプティムの3社と共同出資して起こしたプロジェクト「ランドログ」に参加している。トラスコ中山は、ランドログでの活動を通じて「MRO STOCKER」というビジネスモデルを創出した。
こうしたトラスコ中山の例も踏まえ、福田氏は「データを活用するかしないかで、ビジネスが変わってくる。しかし、使っているシステムが、多様なデータを収集・管理し、それらを分析して意思決定に活用できるようにすることを受け止められるのか」と、デジタルトランスフォーメーションの実現を支えるには、適切な処理が行えるシステムが必要であることを訴えた。