NECは2月21日、モバイルネットワークにおいてリアルタイムの通信制御が求められるサービスの実現に向けて、緊急度の高い車両に無線リソース(周波数帯域や通信時間)を割り当てる「適応ネットワーク制御技術)」を同社のMEC(Multi-access Edge Computing)サーバおよび基地局に実装し、自動運転の安全性を向上する実証実験を行ったと発表した。
昨今、IoT(Internet of Things)の普及に伴い、モバイルネットワークでリアルタイムの通信制御を行う自動車、工場・倉庫内の搬送車、警備用ロボット、検査・宅配用ドローンなどの自動運転技術の開発が進められている。
安全性が最重要となる自動運転では、見通しの効かない場所にいる人間や物体との衝突を回避するため、複数の車両や街頭カメラなどのIoTデバイス間で位置や画像などの情報をリアルタイムに共有し、車両を制御する技術が求められているという。
しかし、既存のモバイルネットワークでは、基地局に接続するデバイスの数や通信のデータ量が増えて無線リソースが不足すると、車両制御に遅延が発生し、円滑・安全な自動運転が困難になると指摘。
今回、デバイスからの情報や通信の状態などを基に、MECサーバ上で動作するContext-aware Service Controller(CSC、)で通信の遅延時間や時間内に送るデータサイズの目標を決定し、CSCの要求に応じてLTE基地局が緊急度の高いデバイスへ無線リソースを優先的に割り当てる、適応ネットワーク制御技術の実証実験を行った。
実験では、電波暗室内に模擬した交差点で街頭カメラの画像をMECサーバが画像解析し歩行者を検出するとともに、周辺車両の位置情報を収集し、それらの情報を個々の車両とリアルタイムに共有する、自動運転の環境を構築。交差点付近のLTE基地局には商用装置を用い、車両模型、カメラ、スマートフォンなど複数の多様なデバイスを接続して、無線リソースが不足した状態を構築した。
CSCとLTE基地局の連携により、交差点を横断する歩行者に接近する車両や後続の車両に対して、目標遅延100ミリ秒以内に注意喚起の情報を届けるように優先的に無線リソースを割り当てた。実験の結果、従来は車両とMECサーバ間を往復する通信の遅延が100ミリ秒以内となる確率が27%だったが、同技術の適用により99%に改善することを確認。
これにより、混雑した通信環境下でも安全運転支援に求められる100ミリ秒以内の遅延を安定的に実現可能となり、周囲の交通環境の情報をリアルタイムに車両へ提供することで、自動運転の信頼性向上に貢献するという。
同社は、実証実験の成果を踏まえ、同技術を自動運転をはじめ、リアルタイムな通信制御が求められる多様なIoTサービスに適用し、今後は同技術の5G対応に向けて開発を進め、より多くのデバイスへの接続、かつさらなる低遅延を実現するサービスへの適用も目指す。
なお、実証実験には総務省の委託研究「電波資源拡大のための研究開発~多数デバイスを収容する携帯電話網に関する高効率通信方式の研究開発~」の成果が含まれている。