RF GaN市場は、通信および防衛産業向けがけん引しており、まもなく5G向け機器への搭載が始まろうとしているため、大きく成長しようとしている。仏Yole Développementによれば、2017年に3.8億ドル規模だったRF GaN市場は、今後年平均成長率23%で成長し、2023年には13億ドルに達すると予測している。
Yole傘下の知的財産権(IP)調査企業であるKnowmadeは、2018年10月までに公開された3750件以上のRF GaN関連特許を抽出し、外国出願された同一内容の特許はひとまとめにして1700件に分類して、質と量の両面から分析を行った。特許としては、RF GaNエピウェハ(GaN-on-SiCおよびGaN-on-Silicon)、RF半導体デバイス(HEMTおよびHBT)、集積回路(RFICおよびMMIC)、RFパワーアンプ(PA)、RFスイッチ、RFフィルタなどが含まれており、その公開特許件数順位は、以下のとおりとなる。
- Cree/Wolfspeed
- 東芝
- 住友電工
- 中CETC
- 富士通
- Intel
- 三菱電機
- 中Xidian(西安電子科技)大学
- パナソニック
- 米MACOM
であり、トップ10社中5社を日本企業が占めており、日本勢の健闘ぶりがうかがえる。残りは、米国企業3社、中国企業1社、それに特筆すべき中国の大学1校という構成となっている。
Knowmadeが特許の量と質両面を考慮しIPポートフォリオの強みの大きな順に企業・大学を位置づけるとCree/Wolfsppdがトップで、その下に日本勢の多くが続くという形となる。同社CEO兼共同創立者であるNicolas Baron氏は、「Cree /Wolfspeedは 、RF GaN分野のIPに関しては間違いなく最強である。特に、SiC基板上のGaN HEMTに関してはダントツのトップである。富士通、東芝、三菱電機などの他の日本企業が特許申請を増加させ、現在強力な特許ポートフォリオを持っているのに対し、住友電気工業は特許活動のペースを落としている。これらの先進企業にパナソニックとカリフォルニア州立大学が続く。IntelとMACOMはRF GaN、特にGaN-on-Silicon技術に関して現在もっとも活発な特許申請企業であり、今日では主要IPで互いに競合企業となっている。米Qorvo、米Raytheon、米Northrop Grumman、NXP Semiconductors、Infineon Technologiesなどの他の企業は重要な特許を多少保有しているが、IPの点で優位な地位にあるわけではない」と述べている。
また、「マイクロ波およびナノ波用途を対象とするRF GaN技術に関する特許分野において、多数のIPを保有しているのは中国のCETCおよびXidian大学である。そして新たに台頭してきたのが半導体製造メーカーであるHiWaferで、3年前からこの分野の特許を出し始め、今日ではもっとも手ごわい中国企業となっている。全体的には、アメリカ企業や日本企業は、RF GaN IP において、重要な役割を果たしており、中国勢が追い上げる構図である」とも説明している。
デバイスの観点から言えば、Cree/WolfspeedはRF用途のGaN HEMT IPにおいてもリードしている。後からGaN HEMTに参入したIntelは、現在もっとも活動的な特許申請企業であり、特にGaN-on-Silicon技術に対して今後そのIPの地位を強固にすると考えられている。
また、GaN RF HEMT関連の特許新規参入者は主に中国企業であり、HiWafer、Sanan IC、Beijing Huajin Chuangwei Electronicsなどが挙げられる。その他の注目に値する新規参入者は台湾TSMCとWavetek Microelectronics、韓国WaviceとGigalane、日本のアドバンテスト、アメリカのMACOMおよびON Semiconductorなどが挙げられている。
今までに公開されたRF GaN関連特許件数の1995年以降の推移を見ると、GaN-on-SiCに関する特許はいままでに147件公開されているほか、GaN-on-Siliconに関する特許も149件公開されている。これらSiCかSi基板をGaNのホスト基板として用いた特許の合計は、RF GaN関連特許件数(1700件)の17%に過ぎないが、2017年に急増している。また、RF GaN関連特許も同様に2017年から急増している。なお、2018年は10月分までの集計のため、実際はもっと増える見込みであるという。