キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)とキヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は2月19日、西東京データセンター(DC)に新棟の建設を3月1日から開始し、2020年夏に稼働を開始すると発表した。これにより、DCを中核としたITインフラサービス事業を強化し、DCサービスやクラウドサービス、システム運用サービスなどのストック型ITサービス事業を拡大していく。

  • 新棟のイメージ

    新棟のイメージ

新棟は延床面積1万7107平方メートル、地上2階~3階、ラック数は最大2880ラックと25MVAの受電容量、CPU室床耐荷重が1.5t/平方メートル、電力・通信回線引き込みが2系統となる。2017年に取得したM&O認証(米国の民間団体「Uptime Institute」が定めているDCの運営品質に関する基準)に加え、ISO20000認証、ISO22301認証が新棟にも提供される。

キヤノンITソリューションズ 取締役 常務執行役員の笹部幸博氏は「西東京DCの既存棟と同等の規模だが、ラック数は1.25倍、受電能力は1.7倍、BCPオフィスフロアは2.3倍にそれぞれ拡大し、効率を追求したレイアウト設計と最新設備の採用により、面積あたりの能力を向上させている。われわれはDCを核にクラウドビジネスの拡大とメガクラウドに対応していく」と、意気込みを語った。

  • キヤノンITソリューションズ 取締役 常務執行役員の笹部幸博氏

    キヤノンITソリューションズ 取締役 常務執行役員の笹部幸博氏

IDCの国内におけるDCサービスの需要動向は、自社のITインフラからクラウドサービスへの移行、重要データを国内DCで処理・保管ニーズ、AI/IoTの利用がユーザー間で拡大していることから、今回のDC建設により、これらの状況に対応していくという。

また、同社では沖縄にも沖縄国際情報通信ネットワークで接続されたDCを整備しているため、西東京DCで障害が発生した場合でもDRサイトとして活用できる点や、オプションである現地SEサービスを受けられるメリットを強調していた。

  • 東京と沖縄2拠点の運用により、BCP対策が図れるという

    東京と沖縄2拠点の運用により、BCP対策が図れるという

キヤノンMJの戦略とコミットするDCに

キヤノンMJグループでは、2019~2021年を対象とした中期経営計画の基本戦略の1つとして「ITソリューションを中心とした市場拡大領域における利益ある成長の実現」を掲げている。

同戦略において大手企業向け、および中堅・中小企業向けSIサービス、業務パッケージソリューション、ITインフラサービス、保守サービス、セキュリティ、BPOと幅広いITソリューション領域で顧客の課題解決に全方位で対応するという。

これにより、ITソリューション事業を2021年に2018年比16.3%増の2300億円、次期長期経営構想期間中(2021~2025年)に同51.7%増の3000億円を計画。うち、ストック型ITサービス事業(サブスクリプション、エンハンス、DC/クラウド、保守、サポートなど)事業においては売上比率を次期長期経営構想期間中に40%(2018年実績:30%)を計画し、DC事業を軸にITストック比率を高め、景気変動に強い体質を目指す。

  • DCを軸にストック型ITサービス事業を拡大していく

    DCを軸にストック型ITサービス事業を拡大していく

一方、キヤノンITSのIT戦略は従来からの業種別の提案型開発を強化するほか、運用・保守業務のフルアウトソーシングに取り組み、新しい領域への挑戦として顧客のデジタルビジネス化の支援と業種・業務特化型サービスの充実を図り、ITインフラビジネスを強化するというものだ。

  • キヤノンITSのIT戦略

    キヤノンITSのIT戦略

同社が提供するITインフラサービスは、IaaSサービスとしてクラウドサービス「SOLTAGE」に加え、システム開発・構築、運用サービスを含めたアウトソーシングと合わせて提供していくことに加え、SaaSサービスはキヤノンMJグループの強みを活かし、働き方改革・業務効率化、イメージング、金融、セキュリティなど新規サービスを拡充するという。

これまでは、大企業が中心となっていたITアウトソーシングの提供範囲を中堅企業に拡げ、IT専任者の不在・不足やITコストの増大などの課題に対し、IT分野別のパターンの活用やフルオーダーに比べてコストメリットがあるセミオーダー型のITソーシングで支援していく。

キヤノンマーケティングジャパン 取締役常務執行役員 エンタープライズビジネスユニット長 兼 キヤノンITソリューションズ 代表取締役社長の足立正親氏は「顧客の顕在化された課題・ニーズの解決だけではなく、より潜在化された課題・ニーズを含め、顧客との共創による解決を図る。業種別(金融・公共・流通)・機能別(帳票・イメージング)に加え、西東京DCにおいて運用管理サービスやハウジング/クラウドなど各種サービスを組み合わせて、プラットフォームの提供を目指す」と、力を込めた。

  • キヤノンマーケティングジャパン 取締役常務執行役員 エンタープライズビジネスユニット長 兼 キヤノンITソリューションズ 代表取締役社長の足立正親氏

    キヤノンマーケティングジャパン 取締役常務執行役員 エンタープライズビジネスユニット長 兼 キヤノンITソリューションズ 代表取締役社長の足立正親氏

今後、グループが補修する認識・認証技術とAI技術の組み合わせによる高度な認識技術や、画像を含む多様なデータを対象にしたビッグデータ解析により、顧客のデジタルビジネスの実現をサポートしていく方針だ。

  • ITインフラビジネスの今後の展望

    ITインフラビジネスの今後の展望