スマートフォンやオーディオプレーヤーといった音響機器などで大音量の音を長い時間聴くと聴覚障害になる恐れがあると世界保健機関(WHO)が警告している。世界の12~35歳の若い世代の半数近い約11億人が難聴になるリスクがあるという。WHOは世界の国々の政府やメーカーに国際基準を示してこの基準に合った機器類の製造を求めている。

  • alt

    WHOが作成した聴覚障害を減らすための国際基準の表紙(WHO提供)

WHOがこのほど世界に提示した国際基準は国際電気通信連合(ITU)と共同で策定した。それによると、聴覚障害にならない安全な音のレベルの目安は、大人で音量80デシベル、子どもは75デシベルをそれぞれ1週間に最大40時間とした。その上でメーカーに対し、利用者がどのレベルの音量をどの程度聴いたかが分かるような機能を音響機器類に付けることなどを提案している。

WHOなどによると、難聴は、今回警告の対象になった大音量によるものだけでなく、加齢や、感染症、薬物の影響、病気の合併症、遺伝的要因など、さまざまな原因で起きる。障害のレベルも小さな音が聴こえない程度から聴力を完全に失うまであり、通常難聴と呼ばれることが多い。

WHOのデータでは、世界で聴覚障害を持つ人は全人口の5%以上に当たる約4億6600万人で、このうちの3400万人が子ども。聴覚障害者の多くは平均所得が低い国々の人たちで適切な医療措置がとられていない。 WHOは、2050年には世界の聴覚障害者は9億人を超えると推定。聴覚障害に対して適切な対策を取らないと年間7500億ドルの損失になるとしている。

WHOのテドロス・アダノム事務局長は、大音量により聴くための器官が損傷したケースを想定して「一度聴力を失うと戻らないと理解すべきだ」と難聴予防対策の大切さを強調。「国際基準は音楽を楽しむ若い人たちの保護に役立つだろう」としている。

関連記事

「騒音性難聴発症のカギ握るタンパク質突き止める 東北大、防衛医大グループ」

「難聴の原因分子の役割解明」