ヤフーは2月13日、自社のビックデータを企業や自治体に提供するデータソリューションサービスを10月より提供開始すると発表した。
同社は、前社長の宮坂氏の時代から「データの会社になる」と宣言。昨年2月の記者会見では、企業間でデータ連携を行う「DATA FOREST」構想を発表。2019年度から事業化するとしていた。
今年の10月からサービス提供を開始するのは、生活者の興味関心を可視化する「DATA FOREST INSIGHT People」、エリア特性・人流を可視化する「DATA FOREST INSIGHT Place」、レコメンドエンジン「DATA FOREST ENGINE Recommend」の3つ。
「DATA FOREST INSIGHT People」は、ヤフーのメディア事業のデータ(ニュース、検索、購買、位置)を元に、人気キーワードランキング、特定キーワードの関連語や時系列での推移、性別、年代、地域などの属性分布を提供するサービス。主に市場調査ツールとしての利用を想定している。
「DATA FOREST INSIGHT Place」は、ヤフーのニュース、検索、購買、位置などのデータを元に、特定エリアにおける生活者の実態や動きをまとめて可視化するサービス。指定したエリアにいる人々の属性・特徴や流出入人口の推移、地域・スポット間の人流規模などを把握できるもので、性別、年代別などの属性分布に加え、興味関心も紐づけて可視化できる。主に街づくりやイベント運営、出店計画などを支援するツールとしての利用を想定しているという。
「DATA FOREST ENGINE Recommend」は、独自に開発したレコメンドエンジンで、ニュース、検索、購買というヤフユーザーの行動履歴データを用いることで、大量の情報の中からユーザーに適した商品や記事などを提示する。主にメディアからECまで、幅広いサービスでの利用を想定しているという。
それぞれの機能において、顧客ユーザーの同意を得た上で、顧客のユーザーIDとYahoo! JAPAN IDを連携することで、より高精度な分析を実現するという。
10月以降は、将来の予測分析を行う「DATA FOREST ENGINE Predict」も提供する予定だ。
なお、これらの利用価格については、提供開始前に発表するとした。
ヤフー 代表取締役社長 CEO 川邊健太郎氏は、「データの会社になる」という意味について、「データとAIを会社のエンジンとしてサービスを改善して、規模を大きくしていくことだ。データ活用を社内グループに留めておくのはもったいない。パートナーにも提供し、社会の活性化に役立てていきたい」と述べた。
また、2月12日から新たなキャンペーンを開始したPayPayのデータも活用する方向で「オフラインの取得にもつとめている。ネットとリアルの掛け橋になって、さまざまなデータが集まってくる」(川邊氏)と語った一方、ソフトバンクのキャリアデータの活用については、「人流データ×検索データ×購買データなど、マルチビックデータが他社との差別化になる。キャリアビジネスは免許事業で個人情報の扱いも異なり、一足飛びに活用するという話にはならない。キャリアよりもわれわれのほうがユニバーサルで、マルチキャリアの位置情報が取得できている。特定のキャリアの位置情報を取得しても、データの質が上がるわけではない」(川邊氏)と、否定的な見解を示した。
同社では、今回のデータソリューションビジネスを、これまでeコマース、FinTech、総合マーケティングに続く4つ目の事業の柱にしていく考えで、川邊氏は今回のサービスを、「2019年度、100社に提供したい。そのためにデータサイエンティスト中心に人員を増員し、他社との連携を積極的に行っていく」と目標を掲げた。
すでに20社以上が実証実験を開始しており、今年の5月には本社内に「DATA FOREST LAB」を設立し、開発中のサービス提供も行っていくという。
江崎グリコでは、R&D部門とともに、顧客様視点の商品開発、将来予測、ユーザーも気づいていない新たなニーズの掘り起こしに利用。ダイエットニーズの分析に活用し、ダイエットに対する関心において、ある栄養素の関連性が高いことを発見し、その関連検索キーワードを取得できたという。
ヤフーデータの活用のメリットとしては、消費者の興味・関心を定量的にとらえる手法として有効で、仮説抽出までの時間短縮ができる点にあるという。また、研究者の消費者への理解が高まり、研究テーマの探索にも有効だという。
セブン&アイ・ホールディングスでは、新婚家庭の検索において、料理名に加え、食材の検索が多いことをつかみ、おせちでは、20代や30代を中心にインスタ映えやお洒落など、他人に見せることを前提にした検索が多いことを発見、商品開発に役立てているという。
自治体では、神戸市が三宮の再整備効果測定に向け、三宮駅利用者の最初の目的地を可視化し、魅力スポットの整備や歩行者空間の拡大に利用しているという。 また、福岡市では、人口が急増するアイランドシティにおいて、人の流動や利用する交通手段の調査において、アンケート調査とヤフーデータの推計が近いことを発見したことで、今後は新たな施策の検討や効果分析に活用できるとした。