日本ヒューレット・パッカード(HPE)では、クラウドとオンプレミスデータセンターの両方のインフラストラクチャで構成される「ハイブリッドIT」のシンプル化をビジョンとして掲げ、社内でも自社製品を活用し、変革を実現している。今回、米HPE Mission Critical Solutions Vice PresidentのJeff Kyle氏に話を伺った。
冒頭、Kyle氏は「従来、われわれでも多くの企業と同様にデータベースがサイロ化し、データの活用が困難だった」と、語る。
当初、これらの課題の解決に向けてコスト削減を目的にOracleやAWS(Amazon Web Services)、オープンソースの「Apache Cassandra」などを検討したが、アプリケーションの重要性が増した場合に耐障害性、高可用性が担保できず、サイロ化の解消が難しいことから、自社製品の「HPE NonStop SQL/MX」を2017年から活用し、クラウドに移行することにした。
同社では2つのデータベースの標準化に取り組んでおり、1つは「SAP S/4 HANA」の環境、そしてもう1つがSQL/MXの環境となっている。S/4 HANAは、基盤としてミッションクリティカルサーバ「Superdome Flex」を利用。インメモリデータベース用でモジュラー型のx86サーバに対応し、ニーズに合わせてスケールアップできる。
一方、SQL/MXは無停止サーバ「HPE Intergrity NonStop」と、同製品のオペレーティング環境「HPE NonStop OS」に統合されたスケールアウト可能な高可用性を持つリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)。
同システムは、独自の「プロセスペア技術」により、障害時でもシステムを再起動することなく処理の継続ができるほか、仮想サーバ環境においてもプロセスペア技術を提供し、テイクオーバー機能により、瞬時にバックアッププロセスが処理を引き継ぐため、サービスを停止させることがないという。
また、HPE NonStop OSおよび無停止対応のミドルウェアが仮想マシン上で稼働し、実行プロセスの冗長化、トランザクションの一貫性保持など、HPE Integrity NonStopのメリットをそのままに無停止ハイブリッドクラウド環境を実現するとしている。
そのほか、Linux KVM上で動作し、NonStop Open System Management(OSM)が標準的なクラウド管理ツールのOpenStackと連動することで、迅速な起動やリソース配備、構成変更を含むさまざまな自動化を可能としている。
同社では、S/4 HANA以外すべてのデータベースのニーズにSQL/MXで対応しており、VMwareやKVMなどの利用を可能とするとともに、近代的なツールが使えるため必要に応じてスケールアウトもできるとしている。
さらに、ノードを直線的に拡張できるため最大4000ノードまでの拡張が可能。アプリケーション側で分散化していることを認識する必要がないほか、リアーキテクチャも必要がなく、Oracle SQLやSAP HANAなどもスケールアウトできる。高可用性に加え、耐障害性を持つことから、セキュティ、データの一貫性を担保し、ミッションクリティカル環境だけでなく、小規模環境でも利用できるという。
これらのメリットを同社では最大限活用しており、Kyle氏は「現段階では、Oracle DBやSQL Serverをはじめとしたレガシーのデータベースが一部残っているものの、75~80%はSAP HANAとSQL/MX、SaaSに置き換わっている。2年後には、すべての移行が完了するだろう」と、述べていた。