国立天文台と東京大学大学院理学研究科、韓国 キョンヒ大学は2月5日、アルマ望遠鏡を用いた観測により、地球から1300光年離れたところにある若い星、オリオン座V883星を取り巻くガスと塵の円盤(原始惑星系円盤)の中から、複数の有機分子を発見したことを発表した。
同成果は、韓国・キョンヒ大学の ジョンユァン・リー 准教授と東京大学の相川祐理 教授をはじめとする研究チームによるもの。詳細は英国の科学雑誌「Nature Astronomy」(オンライン版)に掲載された。
オリオン座V883星は、周囲を取り巻く円盤から大量の物質が星に落下することで、急激に星が明るくなっている状態であることが知られている。星が明るくなるのに併せて、円盤の温度も上昇し、氷が昇華するが、円盤の温度が上昇すると、より外側の氷も昇華していくため、氷に閉じ込められていたさまざまな分子がガスとして放出されると考えられていた。
今回の観測では、メタノール(CH3OH)、アセトアルデヒド(CH3CHO)、ギ酸メチル(CH3OCHO)、アセトニトリル(CH3CN)、アセトン(CH3COCH3)、エチレンオキシド(H2COCH2)、ギ酸(HCOOH)、メタンチオール(CH3SH)を発見。中でもアセトンが原始惑星系円盤から検出された例はこれまでなかったという。
また、一般的な原始惑星系円盤に比べて、オリオン座V883星の円盤ではこれらの分子の水素に対する存在比が約1000倍以上高くなっていることも判明。研究チームでは、複雑な有機分子が、中心星の急増光によって確かに氷からガスとして放出されたことを裏付ける結果と説明しているほか、これらの成分が探査機ロゼッタが調べたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の成分と似ていることも確認したとしている。
なお、研究チームでは、今回のオリオン座V883星のような急増光中のさまざまな年代にある星のまわりの氷の成分を調べることで、星の進化に伴う周囲の化学組成の変化も追いかけることができるようになるのではないかとの期待を示している。