ANSYSは1月29日(米国時間)、マルチフィジックス解析ソフトウェア「ANSYS」の最新バージョンとなる「ANSYS 2019 R1」を発表。また、併せて、日本語版の提供を開始したことを明らかにした。

同社は現在、「Pervasive Simulation(パーベイシブシミュレーション)」を掲げ、ものづくりのすべての分野へのシミュレーションの適用を目指した取り組みを進めているが、 ANSYS 2019 R1の提供は、こうした取り組みの一環となるもので、アンシス・ジャパンにてカントリーマネージャーを務める大谷修造氏は、「基本的な技術の拡張と新しいユーザビリティの拡充」が施されたものとする。また、それでも機能的に不足している部分については、積極的に買収を進める形で統合を図っており、2019年もすでにこの約1か月の間に2社の買収を発表済みだとする。

そうして機能拡充が図られたANSYS 2019 R1だが、主なものとしては、以下のようなものが挙げられる。

  • 流体解析ソフトウェア「ANSYS Fluent」のGUIの日本語対応、起動時のスタートページ表示、「Generalized k-ω(GEKO)Model」により乱流モデルをアプリに合わせて調整することを可能に
  • 汎用熱流体解析ソフトウェア「ANSYS CFX」がFunctional Mockup Interface(FMI)2.0をサポート
  • 「ANSYS DesignXplorer(DX)」技術を活用してWorkbenchから起動可能なROM(縮退モデル)ビューアを追加。一般的なフォーマット形式での出力も可能に
  • 構造解析/伝熱解析「ANSYS Mechanical」におけるDMP(Distributed-memory parallel)環境下での接触解析の効率化。新たにSemi Implicit Methodの実装により、陰的解法を陽的解法へ切り替えることが可能に
  • 電磁界解析における5G、自動運転、コネクテッドカー時代の開発ニーズに対応する機能強化を実施 *さまざまな速度域における電磁界、構造、音場解析を一括してキャンベル線図で表示
  • 2018年に買収したOPTISの灯体リアルタイム・シミュレーションソフトウェア「VRXperience」との連携
  • ANSYS MaxwellならびにANSYS Icepakの日本語GUI環境化
  • ANSYS Fluent
  • ANSYS Fluent
  • 「ANSYS Fluent」の機能拡張の一例

  • ANSYS Mechanical
  • ANSYS Mechanical
  • 「ANSYS Mechanical」の機能拡張の一例

  • ANSYS

    エレクトロニクス関連の各種機能アップデートイメージ

ソフトウェア機能も強化

ANSYS 2019 R1でアップデートや機能追加されたのは、従来のようなハードウェアを解析する機能部分だけではない。アプリケーションライフサイクル管理を構築するツール「ANSYS SCADE」や、仮想システムプロトタイプのモデル化、シミュレーション、および解析に対応するプラットフォーム「ANSYS Twin Builder(旧ANSYS Simplorer)」といったソフトウェアの解析に関する機能強化なども図られた。

SCADEは、より高度な自動運転システムを実現する際に求められるASIL-C/D相当の認証取得に対応することを目指しており、「機能安全への対応や開発の負荷を低減し、品質と開発速度の両立の実現を目指している」とする。2019 R1では、社内基準に対するモデルの適合性を確認できるように「ルールチェッカー」の拡張が施されたほか、「メトリクス」としてモデルの複雑性の解析が可能になった。これにより、モデルを作成した際に、自動的に人手を介さずにチェックを行うことが可能となり、不適合箇所の確認作業が容易になるという。

また、Simulink Importerの改善も実施。これにより、これまでインポートできなかった箇所もインポートできるようになったため、MATLAB/SimulinkからSCADEへのモデル変換効率が向上。既存のMATLAB/Simulinkの資産の相当な部分に対応することが可能になったとする。

  • Simulink Importer

    Simulink Importerの機能改善により、より多くのモデルをインポート可能に

さらにdSPACEのMicroAutoBoxの汎用コネクタ1513をサポートしたほか、AUTOSARのタイミング拡張を使用することも可能に。加えて、Systems Modeling Language(SysML)モデルのインポート機能として、従来のRhapsody、MagicDrawに加え、新たにEnterprise Architectに対応。要件分析により、コードがどのような状態になっているかのトレーサビリティの確保といったことができるようになった。

  • ANSYS

    AUTOSARへの対応を強化

このほか、SCADE ArchitectからSCADE Suiteへのモデル出力により、MBSEからMBDへの移行による両者間の一貫性の逸脱を阻止することができるようになった。

  • SCADE ArchitectからSCADE Suiteへのモデル同期

    SCADE ArchitectからSCADE Suiteへのモデル同期により、一貫性の逸脱阻止が可能に

  • 自動車分野で増えるマルチ/メニーコア
  • 自動車分野で増えるマルチ/メニーコア
  • 自動車分野で増えるマルチ/メニーコア
  • 自動車分野で増えるマルチ/メニーコア。並列性の確保の確認作業の容易化が求められている

一方のTwin Builderだが、「ランタイム生成フロー」、「縮退モデル(ROM化)」、「IEEE VHDL-AMSモデルの暗号化」、「Modelicaモデルエディターの操作性向上およびライブラリ追加」、「Simplified Average IGBT/MOSFETモデルの追加」、「ページポートの操作性向上」といったような機能の追加が行われたという。

  • Twin Builder

    Twin Builderによって物理シミュレーションをMBDの中に取り込むことが容易になる

なお、大谷氏は、「顧客のゴールを共同のターゲットとすると、今、顧客がどのようなことにチャレンジしているのかを捉えることは重要。5Gや自動化、電動化、IoT、デジタルツインといったメガトレンドに対し、今後も歩をともにして、顧客のゴールに向けた新たなソリューションの提供を行っていく」と語っており、今後も継続して機能の拡充と使い勝手の向上を主眼に、ソリューションの幅を広げていきたいとしている。