素材としてさまざまな特長を有することが知られているカーボンナノチューブ(CNT)の産業分野での活用を推進することを目的に、2019年1月30日から2月1日にかけて東京ビッグサイトにて開催されている「nano tech 2019」において、産業技術総合研究所(産総研)、日本ゼオン、サンアローの3者は、合同でCNTをほかの素材と混ぜ合わせると、どのような機能を持つことができるかといったことの紹介を行っている。
例えば耐熱Oリング。一般的なフッ素ゴム(フッ化ビニリデン系:FKM)を用いたOリングの耐熱は約200℃で、それよりも高い300℃耐熱のテトラフルオロエチレン-パープルオロビニルエーテル系(FFKM)を用いたOリングも存在するが、その価格差は10倍ほどあり、なるべく価格を抑えたいというニーズに対する課題となっていた。
今回、FKMをベースに、産総研が開発したスーパーグロース法を用いて製造された単層CNT(SGCNT)を添加することで、230℃まで耐熱性を向上させることに成功した耐熱Oリングを展示。耐熱性だけではなく、長期シールド性や強度、導電性も向上していることが確認されたとしている。こちらは、サンアローから「SGOINT(スゴイン)」という製品名で2018年10月より販売が開始されたという。
展示されているのは、4種類の径の製品だが、こうした規定サイズ以外の径にもカスタマイズ対応可能だとのことで、興味を持った人はサンアローに問い合わせてもらいたいとのことである。
また、このほか、樹脂にSGCNTを耐熱老化防止剤として混ぜることで、耐熱性を向上させた樹脂「CNT/PEEK」(導電性も付与し、帯電防止性や静電防止性も付与)や、GHz帯域の電磁波を厚さ10μmで30dB(99.9%)以上遮蔽することを可能とする水性塗料(コーキング剤)なども展示されている。
産総研では、高品質のCNTをさまざまな産業分野に提供していくことで、新たな素材の可能性などを切り開いていきたいとしており、今後も引き続き、パートナー各社と協力して、次世代の用途開発などを行っていきたいとしている。