playgroundは1月30日、「スポーツ・エンタメ業界の最前線 電子チケットやスタジアムのICT化で変わる顧客体験の未来とは」をテーマにした記者説明会を開いた。
同社は2017年に設立し、コミュニケーション型電子チケット発券サービス「Quick Ticket」やライブ体験のすべてを電子化するWebプラットフォーム「MOALA」などを提供している。
スポーツ・エンタメ業界の現状認識として、playground 代表取締役の伊藤圭史氏は「直近の10年間でスポーツ、音楽を含めたライブ市場は急成長を続けていたが、2016年に突如として頭打ちの状況となった。それまでスポーツ市場は満席率、音楽市場は公演数の増加がそれぞれ市場の成長を牽引していた。その理由としては、人はデジタル化が進めばリアルな体験を望むようになり、特にミレニアル世代ほどその傾向が強いからだ」と説明する。
例えば、従来のマスメディア時代における音楽消費行動は、音楽番組・オリコンで知る→CD・カラオケ・ライブを楽しむ→売れると記事化&ランクインというものが、シェア時代の音楽消費行動では、SNSでシェアされたイベントに行きたい→実際に体験を楽しむ→その体験をSNSでシェアするという循環に変化したからだという。
つまり、体験がメディア化し、次の需要を生み出すサイクルがライブ市場の拡大を生み出したというわけだ。しかし、会場不足に伴い公演数の成長が鈍化したほか、興行者・来場者の意向でチケット価格が値上げできない状態が足かせとなり、市場の成長を阻む原因になってしまったと、伊藤氏は指摘する。
会場不足に関しては、大規模会場の稼働率が上限に達しつつあることに加え、初期投資の確保や投資回収、土地確保の観点から新設のハードルが高くなっていることから、既存施設を活用するべきだという。具体的には、中小規模の低稼働施設の活用と平日利用の拡大、民間企業の新規参入を促すことで、対応するというものだ。
チケット価格の向上については、現状では過去10年間でチケット平均単価の上昇(来場者数も増加)や転売問題などで価格向上の余地はあるものの、正確な需給バランスの測定が難しく、高価格に対しては社会的反発もある。そのため、ダイナミックプライシングをはじめとした価格変動技術の展開と、品質を担保したライブ体験の向上が肝になるという。
このような現状を踏まえ、伊藤氏は次の市場拡大のカギとして「コネクテッドスタジアム」を挙げている。同社ではコネクテッドスタジアムを、インフラの整備を通じてスタジアム内のあらゆるモノ・コトをつなげることで、顧客体験とオペレーション、データを統合し、スタジアムの収益性を高めていく取り組みと、位置づけている。
収益性とコストの観点から、まずは顧客体験を一元的にマネジメントすることで、収益の向上を図るという。具体的には、顧客接点の統合管理や柔軟なチケット販売、体験向上によるチケット単価向上、キャッシュレス決済、新しい応援手段の販売、来場者に対する動画配信、来場者に対する新しいスポンサーモデルの提供などだ。
また、オペレーションのマネジメントでは業務の一元管理&自動化、AIによるセキュリティ、エネルギー効率化により、コスト効率を向上することで人手不足にも対応できるという。さらに、データマネジメントに関してはスタジアム内での購買も含めた包括的なデータや同伴者のデータなどを取得し、各施策の精度向上が期待できるとしている。
伊藤氏は「コネクテッドスタジアムはグローバルにおいて注目を集めており、2021年には2016年比で3.7倍の規模に市場が拡大することが予測されている。収益性を高めるために多くの取り組みはあるが、コネクテッドスタジアムは広範囲にカバーできる。われわれとしてもコネクテッドスタジアムプラットフォームとして位置づけているMOALAに加え、コンサルティング・SIサービスを組み合わせた包括的な支援により、直接的にライブの収益化に寄与できるサービスを目指す」と、力を込めていた。