国立天文台は1月29日、市販の小型望遠鏡を用いた極小天体の観測に成功したことを発表した。
同成果は、京都大学の有松亘 研究員、東北大学の津村耕司 助教、同大の市川幸平 助教、神戸大学の白井文彦 特命助教、京都産業大学の新中善晴 研究員、宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙科学研究所の大坪貴文 宇宙航空プロジェクト研究員、同 和田武彦 助教、同 長勢晃一 研究開発員、国立天文台/アストロバイオロジーセンターの小谷隆行 助教、国立天文台の渡部潤一 副台長らで構成される研究グループによるもの。詳細は英国科学誌「Nature Astronomy」に掲載された。
今回観測された天体は、地球から約50億km離れた太陽系の果て「エッジワース・カイパーベルト」に存在するもの。半径が約1kmのもので、太陽系最古の始原天体「微惑星」の生き残りであると考えられる。こうした天体は小さく暗いため、巨大望遠鏡を使用しても直接観測することが不可能とされてきたが、小型望遠鏡で掩蔽という現象を検出することで観測に成功した。
掩蔽とは、観測者から見て前方の天体が後方の天体の手前の手前を通過したとき、後方の天体からの光を遮る現象のことである。天球上を移動するカイパーベルト天体の場合、背景の恒星の手前を通過するときに0.5秒間この現象を起こすことが知られている。今回の観測では、これを踏まえ、恒星を動画で観測し続けて掩蔽による明るさの変化を観測することで、天体の発見を目指した。
また、カイパーベルト天体の個数密度の観測の結果、今回発見された天体と同じサイズの天体が、これまでの観測による推定数の100倍ほど多く存在することが確認された。これを受け研究グループは、今後も掩蔽を用いた観測を続けることで、カイパーベルト天体の特性を明らかにしていくとしており、惑星の形成プロセスや供給過程の解明につなげたいとしている。