ビジネス専用チャット「direct」などを提供するL is Bはこのほど、都内でユーザー向けイベント「direct User Conference 2019」を開催した。本稿では、同社 代表取締役 CEOの横井太輔氏がプレゼンテーションを行った「directのプラットフォーム構想」について、紹介する。
directの3つのコンセプト
同社では、2014年10月にdirectの提供を開始。最近の伊藤忠テクノソリューションズの調査によると、2018年にはSlackやLINE WORKSなどのビジネスチャットを3割近くの企業が導入し、マーケットは活性化しているという。
横井氏は、そのような状況を受け「数あるビジネスチャットツールが存在しますが、お客様からは何が違うのかということをよく聞かれます。わたしはソフトウェアというのはコンセプトが重要だと考えています。つまり、ソフトウェアの機能の発展していく方向性のことです」と、話す。
directのコンセプトはリリース時から変わらず、「現場と社内をつなぐビジネスチャット」「ユーザーの要望を反映するルール(6週間ルール)」「チャットボットソリューション」の3つだという。
これら3つのコンセプトをdirectは忠実に反映している。directでは写真が多く使われることからトークルームの写真・動画を一覧で見やすく表示する、現場写真活用ソリューション「Photo View」や外部の人と安全に秘匿性を担保したやりとりを可能とする外部連携オプション「Guest Mode」、複数トークルームの同時表示、キーワード監視する現場管理ソリューション「MultiView」などを提供。
また、Slackなど他社に先駆けて2014年12月にチャットボット開発環境「daab SDK」を提供開始し、JR西日本は2018年5月から「忘れ物チャットサービス」に正式採用されている。
現在では、directの導入企業数(2018年12月時点)は1500社を超え、月間アクティブユーザー数は1日あたり10万ユーザーを突破している。
横井氏が考える「direct」プラットフォーム構想とは?
directは提供開始以降も3つのコンセプトを踏まえつつ順調に展開しているが、横井氏が考えるdirectのプラットフォーム構想とは、どういうものなのだろうか。その点について、同氏は「動かすために必要な土台となる環境」と位置づけている。
これまでも、サイボウズのグループウェア「Garoon」や、ブイキューブのテレビ会議システム「V-cube」などのサービス・ソリューションと連携している。
横井氏は「これまでもチャットボットを通じた連携に取り組んできましたが、さらに踏み込んでチャットボットを使わずに、直接連携するためAPIによる連携を2019年は推進します。具体的にはREST APIやWebhook、URLスキームなどです。これにより、directと各社のサービスが直接つながります」と、語気を強める。
現状では、レゴリスが提供する図面管理・情報システム「SpiderPlus(スパイダープラス)」、ウイングアーク1stのBIダッシュボード「MotionBoard(モーションボード)」が検討を進めている。
また、今春には従来は独立したサービスとして提供していた社内のFAQをExcelで管理し、チャットボット形式で問い合わせが可能な「AI-FAQボット」がdirectから利用が可能になるという。
さらに、3月からは現場向けIoTサービスとしてアイラのサービス基盤「botHUB」をベースにdirectを用いて現場に設置されたモニタに情報周知が行える「directサイネージ」の提供を予定。
同サービスの特徴は、PCだけでなくスマートフォン/タブレットから時間・場所を選ばない更新や、即時更新/予約配信/繰り返しでき、写真、動画、テキスト、音声の情報発信などを可能とし、自動翻訳による多言語表示に対応(実装予定)し、工事現場や事務所、幼稚園、保育園、文教施設などでの利用を想定している。
このように、同社では今後APIをベースとした取り組みを、積極的に展開する方針を示している。
横井氏は2019年のテーマとして「お客様に感謝されることです。お客様からのご要望に感謝し、どうすれば実現できるか、喜んでもらえるかを愚直に繰り返す1年にしたいと考えています。今年は消費税率10%のスタートやラグビーW杯など多くのイベントがあります。われわれではMuitiViewのiPad対応やAndroid写真加工、ファイルDLの権限設定、ノート機能、掲示板機能などを機能追加に加え、安定稼働を実現していきます」と力を込めており、directがプラットフォームとしての真価が問われる年になりそうだ。