日本IBMは1月18日、都内で記者会見を開き、昨年11月末にリリースしたデジタルトランスフォーメーション(DX)を支える統合BIプラットフォーム「IBM Cognos Analytics」の最新版「v11.1」の説明を行った。
2008年に同社が買収したCognosは1969年に設立し、日本国内ではみずほ銀行や住信SBIネット銀行など大手顧客を中心に採用されている。
日本IBM IBMクラウド事業本部 アナリティクス事業部 Products & Solutions 統括部長の村角忠政氏は「昨今、われわれはAIに注力しているが、AIをよりよく活用していくためにはデータは重要だ。IBMのAnalytics製品は、あらゆるデータを使いやすくする『Any Data』、誰もがデータ分析者になれる『Anyone』、Watsonをはじめ多様なAIに対応する『Any AI』にフォーカスし、製品を開発している。これに倣ったCognosはAIを活用し、大きく進化した」と、述べた。
BIの領域は企業が生成したデータを社員が一元的に提示する旧来の「エンタープライズBI」と、ここ数年でベンチャーや新興企業などが提供する一般ユーザーがデータをもとに自分で分析・ヴィジュアル化する「セルフBI」の2つに分類されている。
村角氏は「顧客に提案する中で感じることは、現状では統制がとれている状況下で使うエンタープライズBIのニーズが大きい。一方で、セルフBIは市場が拡大しているものの、部門単位で導入されているケースが多く、同じ企業であっても部門ごとに用途が異なり、ガバナンスが効かない。また、一般ユーザーのレベルにより、使いこなすレベルに違いがあることなどが課題となっている」との認識を示す。
そこで、同社はIBM Cognos Analyticsの最新版としてv11.1をリリース。最新版では、データの自動加工・結合・モデリング、データの内容・相関の自動解析、可視化・分析手法の自動選定、自然言語の応答で可視化・分析を行い、AIがデータの準備と分析を自動化している。
従来のセルフBIは業務の8割がデータ整備だったが、Cognosの場合、生データをダッシュボードにアップロードすれば迅速に分析を開始し、データ整備を極小化できるという。
さらに、データ分析に関しては従来は一部のスキルが高いユーザーだけがツールを駆使し、インサイトを発見していた。Cognosはダッシュボード上において自然言語で質問すればAIが最適な手法を提示し、誰でも容易にインサイトを獲得することを可能としている。
日本IBM IBMクラウド事業本部 アナリティクス事業部 ダッシュボード・サイエンティストの木戸隆治氏は「AIをCognosに活用することでBIのパワーユーザーだけでなく、ライトユーザーも巻き込む」と、話す。
例えば、CVSデータをCognosにアップロードすれば、データを自動的に収益や顧客生涯価値などが他の項目とどのような相関関係があるのかを分析した上で、ナレッジを抽出。
また、操作を覚えるのではなく、対話型で取得したいデータを閲覧することを可能としており、容易に見つけ出すことができるほか、グラフなどのアウトプットや示したグラフから傾向を読み取り、インサイトを分かりやすく表現する。さらに、細かく分析したい場合も自動的にAIが統計モデルを生成し、スパイラルチャートなどを作成してくれる。
木戸氏は「われわれが持つライトユーザーの顧客層全体に拡げていく」と意気込みを語っており、村角氏は「真のDXを支えるツールとして位置づけており、エンタープライズBIとセルフBIを統合した共通プラットフォームだ」と力を込めていた。
提供形態はクラウドとオンプレミスを用意。クラウドは月額9700円で機能制限がなく、1ユーザーから利用が可能な「Premium Edition」を新たに加え、半年単位契約、シングルテナント環境で最低25ユーザーからの「Workgroup Edition」、年単位契約、ベアメタルサーバ、最低1000ユーザーからの「Enterprise Edition」の3種類。
オンプレミスはPVU(プロセッサバリューユニット、IBMミドルウェア製品のライセンスコストを決定するために使用される計測単位)課金、またはユーザー課金となる。