社会医療法人の北斗とリコーは1月18日、共同研究プロジェクトの成果として、脳磁計測システムで計測したデータを「脳機能ビッグデータ」として取りまとめ、解析するための「解析支援ツール」を開発したと発表した。

北斗は、脳機能ビッグデータと解析支援ツールをウェブサイト「MEAW Homepage」を通じて医療関係者や学術研究者向けに無償公開する。これにより、脳磁計測システムを用いて検査を行い、脳機能の変化を伴う疾患の予防医療・早期発見に関する研究が活性化するとしている。

特に認知症の患者数は、全世界で現在約5千万人とみられており、高齢化の進む日本においても無視できない社会問題の1つとして考えられており、認知症の予防医療・早期診断の方法を開発・提供することは、医療関連業界における急務となっているという。

その解決策の1つとして、一般人を対象に検診(スクリーニング)を行うことで、リスクが高い人を早期に発見し、専門的な診察に導く方法があり、スクリーニングを行うには選別基準となる標準データ(疾患を持たない患者のデータのみで構成されたビッグデータ)が必要となるが、脳磁計測システムを用いた検査をする上で、医療現場において利用可能状態で公開されている標準データが存在しないことが課題となっていた。

両者は1月から認知症をはじめとした脳機能の変化を伴う疾患の早期発見・スクリーニングの技術開発を目指し、脳磁計測システムを利用した共同研究を行っており、脳機能ビッグデータは同システムを用いて日本人102人から計測した、日本初の脳磁計測システムの標準データだという。

これらのデータは、脳磁計測システムで記録されたデータに数学的処理を施した脳機能画像データであり、医療関係者・学術研究者が活用しやすい形式になっている。

また、認知症に限らず、脳の神経生理学的信号の変化を伴う機能性脳疾患一般の予防医療・早期発見への応用のための土台となると期待されており、将来は脳の構造的・解剖学的評価を行う既存の脳ドックシステムとは一線を画し、脳の機能的な評価を行うことができる脳機能ドックシステムの構築へとつながると期待されている。

データの公開に合わせ、北斗はMEAW Homepageを通じて、解析支援ツール(MEEG Automated Workflow System、MEAW SYSTEM)を公開。同ツールを利用することで、リコー製・横河電機製の脳磁計測システム利用のユーザーが独自のデータを解析し、標準データと統計的に比較することが可能になる。

脳磁計測システムのデータ処理・解析は、従来は時間がかかるものであり、脳磁計測システムを利用する医療現場での慢性的な問題の1つと考えられてきたが、同ツールは課題の解決が図れるという。