日本オラクルは1月17日、本社内に全国の中堅・中小企業をカバーするデジタル・セールスの拠点「Oracle Digital Hub Tokyo」を開設したと発表した。同拠点には、クラウド・アプリケーションとクラウド・テクノロジー製品のデジタル営業組織「Oracle Digital」、クラウドERP「Oracle NetSuite」の部門が所属している。
代表執行役社長兼最高経営責任者のフランク・オーバーマイヤー氏は、「Oracle Digital Hub Tokyo」が同社にとって重要な理由は2つあるとして、次のように語った。
「市場を見ると、大規模企業と比べ、中堅・中小企業は必要な人材が異なり、ビジネスを推進するためにオープンなコラボレーションが行えるなど、異なる環境が必要だとわかった。また、プレゼンテーションのツールなど、新しい人材を引き付けるための設備が必要であると感じていた。Oracle Digital部門には、他の部門にはいないような人材がそろっている」
Oracle Digital部門のアプリケーション関連のビジネスについては、執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 オラクル・デジタル 善浪広行氏が説明した。Oracle Digital部門は立ち上げから1年半がたつが、新しい会社を立ち上げるイメージを持って進めていくよう言われたという。
善浪氏は、Oracle Digital部門の人材を採用する際の基準として、「ポジティブなマインドセットを持っていること、自己変革する素質があること、チームで協調できるよう相互尊重できること」を挙げた。こうした基準に基づき、平均年齢30歳前後のデジタル時代を意識した人材を採用している。
Oracle Digital部門では、ERP、SCM、HCM、CXとすべてのSaaSを網羅している。また、「IaaSとPaaSを強みとして、顧客の全システムをクラウドに移行することにも注力している」と善浪氏は語った。
Oracle Digital部門のテクノロジー関連のビジネスについては、執行役員 オラクル・デジタル本部長 本多充氏が説明した。
同社は昨年、自己稼働、自己保護、自己修復を行う自律型データベース「Oracle Autonomous Database」の提供を開始したが、Oracle Digital部門では、既存の顧客に対し、オンプレミスのOracle DatabaseからAutonomous Databaseへのアップグレードを推進する。
また、スタートアップや新規の顧客に対し、IaaSを中心に販売を進める。本多氏は「データベースに課題を抱えている企業は多く、Oracle Cloud InfrastructureとAutonomous Databaseの話をすると、興味を持ってもらえる機会が多い」と話した。「中小企業ではクラウドを使いたくても、そのための人材が割けない状況にある。自律型データベースであるAutonomous Databaseは中小企業の人材不足の解消にも役立つ」と同氏。この半年で、Autonomous Databaseはインプリメンテーションが進んでいるという。
本多氏は「Oracle Digital Hub Tokyo」についても説明した。「デジタル・ワークスタイル」「コラボレーション」「サステナブル・ワークスタイル」「デジタルビジネスを推進するための場」が設けられている。デジタル・ワークスタイルでは、全国の顧客とリモートでコミュニケーションがとれるような設備が整備されている。
また、「数寄屋」というコンセプトの下、21階、20階、19階にそれぞれ異なるテーマに基づいたデザインが施されている。21階は「水」と「チームワーク」、20階は「木」「相互尊重」、19階は「土」「誠実」がテーマとなっている。
ここ数年、最新技術を取り入れたオフィスを顧客やパートナー企業に開放し、共創によるデジタルトランスフォーメーションの実現をうたうITベンダーが増えている。「Oracle Digital Hub Tokyo」は当座のところ、自社の働き方を変えるために社内での利用にとどめ、将来的には社外に開放することも考えているという。
2019年は3つの分野に注力
オーバーマイヤー氏からは、2019年に注力している3つの分野に関する説明もあった。
1つ目はデータセンターだ。昨年の年次イベント「Oracle OpenWorld 2018」で、セキュリティを強化した新たなクラウド基盤「Generation 2 Cloud」に対応したデータセンターを東京と大阪に開設することが発表された。「日本におけるデータセンター開設はわれわれにとっても顧客にとっても重要なこと。国内のデータセンターについては多くのニーズがある。そして、このことはオラクルが日本に大きく投資していることを意味する」と、オーバーマイヤー氏は語った。
2つ目はAutonomous Databaseだ。「Autonomous Databaseはチューニングが自動で行われ、AIも組み込まれている。オンプレミスのOracle Databaseを利用している顧客のAutonomous Databaseへの移行に力を入れたい」とオーバーマイヤー氏は述べた。なお、本多氏によると、ここ半年でAutonomous Databaseの導入は増えているそうだ。
3つ目は統合ERPパッケージ「Oracle E-Business Suite」だ。現在、2500のユーザーがオンプレミスのOracle E-Business Suiteを利用しているが、これをクラウドに移行していくことを推進していくという。