Webやテキストエディタで見るテキストの書体はほぼ一様で飽きが来る。たまに表示フォントを変えるだけで気分転換ができるものだ。書体を変えると、柔らかくも強くも美しくも変わってくる。中国より伝わって、日本の漢字をはじめとした文化に大きく寄与した「書」の世界。最近では筆や墨汁に触ることも無くなってしまったが、あらためて"書道"を調べると、文字自体に造形的魅力やメッセージを込めるその文化は、テキストエディタやWebのフォントに足りない何かを持っているように感じるものだ。
内田洋行は、1月16日より東京国立博物館で開催されている特別展「顔真卿(がんしんけい) ―王羲之(おうぎし)を超えた名筆―」における技術協力や特殊映像コンテンツ制作を行っていることを発表している。特設サイトにその解説が記されている。篆書体(てんたいしょ)から隷書、草書、行書、楷書と漢字の字体は読みやすさ、書きやすさ、美しさの要素を求め変遷していく。我々にも馴染み深い書体である"楷書"を完成させたと言われる顔真卿(がんしんけい)の作品を中心にその変遷を"ビビッド"に照らし出している。
日本の空海も学んだという"書聖"王羲之の美しい書体が一世を風靡するなか、政治家でもあった顔真卿は、唐の6代皇帝玄宗に対して起こった安禄山による大規模な反乱「安史の乱」(755年)平定のための挙兵に参加、貢献するも従兄弟が犠牲になる。顔真卿はこれを供養するために起こした激情の書「祭姪文稿(さいてつぶんこう)」(台北 故宮博物院所蔵)を力強い楷書で残しており、今回初来日している。推敲のあとや感情の揺れがまざまざと見て取れるもので歴代皇帝の至宝にもなっていたというが、繁栄を誇った唐を大きく揺さぶった安史の乱を契機に王羲之の書法から、顔真卿に代表される自らの感情を率直に表現する書法へと移り変わっていくそうだ。
そんな特別展「顔真卿(がんしんけい) ―王羲之(おうぎし)を超えた名筆―」だが、内田洋行と連結子会社のパワープレイスが"書"の魅力を伝えるために現物を複写した高精細データから一文字ずつ、詳細に拾いレンダリングを用いた映像として再現。祭姪文稿では、"書き出しから推敲の跡が残されるまで"を映像化、顔真卿の感情を感じられるようなコンテンツを制作し、展示場の演出に一役買っている。内田洋行は、教育用コンテンツ配信サービス「EduMall」を2002年より展開。インストール不要でデジタル教科書や動画、副教材など豊富なコンテンツを年間契約で学校向けコンテンツを配信している。パワープレイスは、空間デザイン、プロダクトデザイン、システムデザイン、グラフィックデザインを主要事業とする内田洋行の連結子会社で今回のコンテンツ制作にはリアルタイム3DCG技術を用いている。