東京海上日動火災保険と日立製作所は1月16日、製造現場においてデジタル技術を活用した運用・保守を推進するためのデジタルソリューションを共同で提供し、そこから得られるデータを活用した新たな保険サービスの開発に向けて両社で協創を開始することについて、合意したと発表した。

製造現場において、安全かつ安定的な運転継続が求められるような機器やプラントは、制御システムからの情報や現場巡回による目視確認などにより、個々の機器や設備の運転状態を把握することが一般的となっているが、その際には熟練技能者の経験やノウハウに基づいた判断に依存しているという実態があるという。

一方、労働人口の減少により熟練技能者の確保は年々難しくなっており、熟練技能の継承は製造現場の安定稼働や生産の効率化を図る上で喫緊の課題となっている。経済産業省が昨年5月に発行した「2018年度版ものづくり白書」においても、人手不足が深刻化する中での「現場力の維持・強化」と、データ資源を活用したソリューション展開による「付加価値の創出・最大化」が課題とされている。

これらの課題を解決するために、AIやIoTなどの最新のデジタル技術は重要な手段として製造現場において積極的な活用が急務とされており、両社は製造現場でのデジタル技術の普及を目指し、付加価値のあるデジタルソリューションに加え、これまでにない新たな保険商品や付帯サービスの開発に向けた協創を本格的に開始する。

具体的には、東京海上日動の蓄積した事故データや保険サービスと、日立が培ってきた「OT(Operational Technology)・IT・プロダクト」を融合させた技術・ノウハウを組み合わせた新たな取り組みを進め、第1弾として日立のIoTとAIによる予兆診断技術を活用し、物的損壊を要件とした従来の保険に加えて、予兆を検知したことに起因して製造現場側での対応に要する費用などを補償する新たな保険を組み込んだソリューションを提供開始する。

これにより、新ソリューションを導入した機器やプラントにおいて、経験やノウハウだけではなく、予兆診断データに基づき事故を未然に防ぐ運用・保守の普及を促進していくという。

さらに、今回の取り組みによって得られる運転データや保守データを両社で分析、活用することで、東京海上日動はAIやIoTから得られるデータを活用した事故の未然防止に繋がる新たな保険商品や付帯サービス(=事前の安心の強化)の開発を加速させるほか、日立は「Lumada」の製造業向けデジタルソリューションのラインナップを拡充させる。

両社は、東京海上日動が長年培ってきた保険の引き受けや事故対応、リスクコンサルティングのノウハウと、日立が有する予兆診断・データ分析のための各種技術を組み合わせた新しいリスク分析モデルの構築により、製造現場全体の生産性向上や安定稼働を実現する考えだ。なお、すでに一部の化学メーカーで実証実験を進めており、今後は他の業種および海外の製造現場への展開も視野に入れ進めていく。