半導体市場調査会社の米IC Insightsは、2019年のNAND型フラッシュメモリ向け設備投資額について、前年比18%の260億ドル規模と、大幅な減額が予測されるが、それでもDRAMやファウンドリなどのほかの半導体セグメントと比べても最大規模の投資額を維持する見込みであるとの予測を公表した。
2017年に急増するNAND需要に対応するために、各社が3D NANDの製造ラインの増強やアップグレードを実施。その結果、同年の投資額は前年比92%増の276億ドルと脅威の伸びを見せ、2018年もその勢いを受け、同16%増の319億ドルとなっていたが、その勢いが2019年に止まる見通しだが、IC Insightsでは、健全な投資額を保っているともしている。
2018年、NANDメーカー各社は新工場た新規ラインを次々と稼動させている。例えばSK Hynixは韓国の清州(チョンジュ)に新工場となるファブM15を稼動させ、72層3D NANDの出荷を開始したほか、Micron Technologyはシンガポールにある既存ファブ2つをアップグレード、かつ3つめのNANDファブの建設に着手した。また、東芝メモリも四日市工場に新たなファブ(第6製造棟)を建設、2019年初頭からの開始を予定しているほか、2018年8月に岩手県の北上市に新たな工場建設に着工している。
さらに、新規参入として、清華紫光集団が所有するXMC /Yangtze memory Technology(YMTC)が、新工場の建設を完了し、設備の設置を終え、32層3D NANDの少量生産を開始させており、Samsung Electronicsをはじめとする既存のNANDサプライヤ各社は、中国勢がまもなく本格的にNAND市場に参入していくることに警戒感を強めている。そのため、Samsungは2019年も継続して多額の設備投資を実施し、競争力を維持していくとしており、その額は70億ドルとIC Insightsでは予測している。
それでも下がり続けるNAND価格
とはいえ、台湾TrendForceの調査によると、「2018年は年間を通して供給過剰に陥ったNAND市場だが、2019年もノートPC、スマートフォン、サーバおよびその他の最終商品の需要見通しが弱含みのままで、供給過剰が続く」との見通しが示されている。そのため、NANDサプライヤ各社は、2019年の設備投資額を減額して、ビット出荷数量を抑え、供給過剰の緩和に動くのでは、という見方がなされている。
この背景としては、過剰在庫が続いており、NANDの顧客向け見積もり価格がTrendForceが以前予測した額よりも下落している点が挙げられ、2019年第1四半期の価格は以前の予測であった前四半期比10%減から、同20%減へと下げ幅が拡大する見込みで、さらに第2四半期も同15%近い下落が生じる可能性があるとしている。
また、2019年後半には、ピークシーズンの到来を考慮すると、価格の下落が緩和される可能性があるとはいえ、それでも四半期ごとに約10%の下落が続くと見ている。
なお、こうした状況ながらNANDサプライヤ各社がビット生産量の増加を、これまで以上に制限できるかどうかはまだわからないとしており、TrendForceでは、このまま行けば、2019年末には、NANDの平均価格は前年の半値近くまで値下がりする可能性もあるとしている。