日立製作所は1月11日、YAMAGATA、京都機械工具とともに、鉄道車両向けにAR技術を利用したボルト締結作業管理システムを開発したと発表した。

新システムにより、作業者が装着するヘッドマウント型スマート端末のディスプレイ上へ締結すべきボルトの位置を表示し、表示どおりのボルトを規定の力で締めることができたかをメーターで確認できると同時に、デジタル処理により自動的に管理することができるという。

鉄道車両製造においては、機器類を固定するボルトが走行中も緩むことがないよう、確実にボルトを締める必要があり、これまで日立ではデジタルトルクレンチシステムを使い、自動で締結力を判定するとともに、その結果を記録していた。

具体的には、作業者がタブレットPC上に表示されたボルトを選択後、連動するデジタルトルクレンチによって締結作業をすることにより、自動的に締結結果の照合と合否判定、データベースへの登録を行っていた。

しかし、この方法では作業者はタブレットPC上で作業対象のボルトを選択・指定する必要があったという。また、作業者はタブレットPCで選択したボルトと実物のボルトが相違ないことを確認して締めつけ作業を行うが、タブレットPC上で指定したボルトと実際に締結したボルトが一致しているかの確認はシステムで自動的に判定することができず、作業ごとに作業者と検査員などが人手による複数回の安全性、品質確認を行っていた。

今回、同社は従来のデジタルトルクレンチシステムに加え、ヘッドマウント型スマート端末を利用したAR技術を導入し、締結作業全体のデジタル処理による自動での合否判定を可能とした。

ヘッドマウント型スマート端末のディスプレイには締結すべきボルト上にボルトの3Dモデルが表示され、事前に入力した3Dモデルに付随する設計データを元に作業者を誘導。スマート端末に付属するカメラは締結作業を常時監視しており、デジタルトルクレンチとの連携で指定のボルトが規定の力で締められたかを自動判定する。

作業が指定通り行われたと判定された場合は次の作業が表示され、ボルトの締結が不十分だった場合などは、再度作業を行うよう表示される。

  • 従来の手法(左)とAR技術によるボルト締結の比較イメージ

    従来の手法(左)とAR技術によるボルト締結の比較イメージ

これにより作業者は、従来のようにタブレットPC上で指定したボルトと実際に締結したボルトが一致していることの確認に手間取ることなく、ヘッドマウント型スマート端末のディスプレイを通した視界上で効率的に作業を実施することができるという。

今後、日立は鉄道車両製造において、開発したボルト締結作業管理システムの現場実証を重ね、2019年度下期の実運用を目指す方針だ。