DRAMの大口価格が2018年第4四半期に前四半期比で10%ほど下落したDRAM業界。主要メーカー各社は、主軸のPC、サーバ、スマートフォン(スマホ)ならびにそのほかの民生品向け需要な、今後もしばらくは弱含みが続くと見ており、2019年は設備投資を見直すことで、価格の下落を食い止めようとしているとの見方を台湾TrendForceの半導体メモリ調査部門DRAMeXchangeが報じている。
DRAMeXchangeでは、メーカーの設備投資計画は通常、実際のビット出荷数量にもっとも関連性のある先行指標であるとしており、 2019年には、世界規模のDRAM生産のための設備投資の総額は約180億ドルと予測している。これは昨年比10%の減少となる。また、この金額は、近年でもっとも保守的な水準にとどまっている。
DRAMメーカー各社ともに設備投資額を削減
Samsung ElectronicsとSK Hynixの2社は、2019年の半導体設備投資を削減する計画をDRAM各社の中で先んじて発表した。マーケットリーダーであるSamsungの2019年のDRAM向け設備投資額は80億ドルの予定だが、これは主に微細な1Y-nmへの移行と新製品の開発に充てられる。
また、Samsungの2019年のウェハ投入計画は、近年もっとも保守的なものになると見られる。韓国・平澤(ピョンテク)工場での生産能力の増強を行わないことを決定したためだ。これにより、Samsungの年間出荷ビット数量の伸びは近年もっとも低い前年比約20%増にとどまる見通しである。
一方のSK Hynixは、2019年の設備投資額を55億ドルに減額することを明らかにしており、その投資先も、主に微細化プロセスへの移行と歩留まり向上のために投資する計画である。しかし、かねてより建設中だった中国・無錫の第2DRAM工場はすでに完成しており、2019年を通して月間投入枚数3〰4万枚(WSPM:wafer starts per month)の生産能力増加が見込まれている。DRAMeXchangeによると、SK Hynixの2019年のビット出荷数量は前年比21%増の見込みで、Samsungのそれよりわずかに高くなる見通しだという。
米Micron Technologyも、先般、DRAM向け設備投資の金額を30億ドルに減額することを明らかにした。また、同社は、在庫水準のさらなる上昇を防ぐために、2019年のDRAM生産高予測をこれまで公表していた約20%増から同15%増に下方修正している。
同社は、子会社のMicron Memory Taiwan(旧Rexchip Electronics)、Micron Technology Taiwan(旧Inotera Memories)、およびMicron Memory Japan(旧エルピーダメモリ)各社の生産能力を拡大しないとしているため、2019年の生産能力は総計35万枚(投入ウェハ枚数)/月に留まる見込みである。
それでも生産能力が増加するとすれば、1Y-nm生産への移行でウェハ1枚当たりの取れ数が増えるためである。 DRAMeXchangeでは、Micronの方がSamsungやSK Hynixよりもコスト構造が弱いため、価格下落の影響を受けやすいと見ている。したがって、Micronは、価格下落に対処するために、生産と設備投資の両面の調整をする頻度を増やす必要がある。結果として、Micronのビット出荷数量は、15%ほどしか増加しない見込みで、ライバルの韓国勢より伸び率の低いMicronのDRAM市場シェアは低下するとDRAMeXchangeは見ている。
高粗利益率維持のために各社の生産計画は保守的に
新たな競合の参入がない寡占市場においてDRAMメーカー3社は、ともに生産計画を調整し、価格競争を避けるために設備投資を削減しようとしてきた。収益性の面では、SamsungとSK HynixのDRAM事業の粗利益率は80%近くを維持しており、Micronも粗利益率60%以上を維持している。そのような高いマージンの下で、DRAMメーカーの2019年の生産計画が保守的であることは合理的であるとDRAMeXchangeは判断している。
また、需要面でも、2019年第1四半期は、正月休みや季節的な閑散期のために、需要がもっとも減る時期にあたるほか、第2四半期以降も需要の回復の兆しは今のところ見ることができていないというのが実情といえる。
中でも中国と米国の間でくり広がる貿易戦争は、市場に不確実性をもたらしており、DRAMeXchangeも2019年のDRAM価格の動向について、2019年第1四半期で15%、同第2四半期で10%未満の下落と予測している。さらに、2019年後半も、需要が大幅に改善されない限り、価格は四半期ごとに5%程度の下落が続くとの見通しも示している。
なお、Samsungは1月8日、2018年10~12月期の連結決算(速報値)を発表したが、それによると売上高は前年同期比11%減の59兆ウォン、営業利益が同29%減の10兆8000億ウォンと2年ぶりの減益となった。これは半導体部門を含む全体の業績であり、半導体などの個別部門ごとの業績発表は今月末まで待たねばならぬが、同社は、市場でのDRAM需要が急速に落ち込んできており、このため、同社全体の営業利益の過半をたたきだしてきたDRAMの出荷が減少し、減益の主たる要因となっていることを認めている。