キリバ・ジャパン 代表取締役社長 小松新太郎氏は、2018年5月に新社長として就任した。ようやく伸びを見せてきたという日本市場について、就任半年の小松氏に語ってもらった。
ビジネスの現状について教えてください
小松氏:2013年から事業を開始して6年目になりますが、2018年3月前半で日本のお客様が50社を超えました。ある一定のマーケットができつつあります。10月の段階で1年の目標は達成しており、このままいけば昨年実績に対して約30%アップ、全四半期で昨年を上回る状況にあります。非常に堅調に推移しているといえるでしょう。同様にグローバルでも非常に高い成長率で、四半期によっては50%を超える時もあります。日本だけでなく、グローバル全体でトレジャリーマネジメントというマーケットが花開こうとしています。
トレジャリーマネジメントという市場で活躍するプレイヤーは他にいるのでしょうか
小松氏:われわれ以外では、非常に少ない状況です。一部国内ベンダーが総販売店という形で海外製品を扱っていますが、日本法人として活動できているのはわれわれだけですね。
なぜプレイヤーがそれほど少ないのでしょうか
小松氏:トレジャリーマネジメントという領域は、一般的に経理・財務という言い方をされますが、会計とは全く投資額が違います。会計という分野には投資が進んでいて、いろいろなプレイヤーがいますが、財務には専門ソリューションがほとんどありません。財務分野には教科書がなく、アプリケーションが出しづらかったという側面があります。
日本企業ユーザーが50社を超えたということですが、伸びるきっかけはありましたか
小松氏:意識の高いお客様がいち早く導入してくださった後、2-3年の中だるみがありましたが、稼いだお金をどうやって使うのかという観点への意識が、企業の中で高まってきているということがあります。
もうひとつ、以前はキリバ・ジャパン自身がどういうお客様に必要されているのかを理解できていなかったという点もあります。アプローチするお客様の業種やビジネス規模もバラバラで、たまたまニーズのあるお客様に当たると導入していただけるという状態でした。現在は景気の上向き、米中間の関税の問題による製造業でのサプライチェーンの見直しなど、自分たちがどこで稼ぐべきなのか、どのリスクを回避しなければならないのかを考える気運が高まっています。これも一つのきっかけでしょう。
社長就任から約半年が経過しましたが、現状の課題や対策についてどうお考えですか
小松氏:私は5人目の社長です。就任時、20人程度の組織でそれぞれが疑心暗鬼になり、やっていることの価値に不安を持っていました。小さな組織でも壁があったのです。そのため、最初に全員が向くべき目標を1枚の絵で示したのです。真ん中にお客様がいて、いただいたチャンスには必ず成功と幸せをお届けし、信頼され、結果としてビジネスのオポチュニティを得る。このサイクルをどれだけ回せるかがわれわれの成功であり、目指すところだということです。これをゴールデンサイクルと呼んでいます。
もう1つは、単純なことですが社員証を日本法人で初めて作りました。これはわれわれのプライドであり、このブランドにかけてやっていくのだということを示すものです。上手くいかなかった時に出てきた不信感や不安に、プライドと方向性を与えたのです。
成功に導く具体的なポイントとしては、どんなものがあるのでしょうか
小松氏:お客様がわれわれを信頼してくださり、仲間を増やしてくれることが、結果的にわれわれの成長になります。そのためには満足度を上げることが大事です。CS活動はまだまだ足りていませんが、われわれのビジネスは継続して使っていただくことが生命線です。新規も大事ですが、お客様の満足度を高め、お客様がkyribaの仲間を増やそうと思ってくださることが成功だと思っています。
kyribaの強みは何でしょう
小松氏:まず、財務の非常にユニークなソリューションを持っていることです。日本法人の強みは、ダイレクトセールス・ダイレクトサービス・ダイレクトサポートです。ただし量の問題がありますので、限界があります。今後はダイレクトサービス・ダイレクトサポートを強化しながら、一緒にマーケットを開拓していただくパートナーの育成を急ピッチで行っていきます。
間接販売はすでにグローバルでは開始しており、30%程度がパートナー経由の販売です。日本ではまず一緒にサービスを提供して行くのを次のステップとしたいと思います。
現在ターゲットにしているセグメントはどこになりますか
小松氏:売上1000億以上で、複数の事業を営み、複数の国々でビジネスをし、複数の銀行と取引をしている企業を第一ターゲットとしています。そこにSAPのお客様であることが加わると、さらに確度が上がるという実感があります。50社を超えるお客様の約7割がSAPを使っています。
一方、急成長している企業も一定レベルを超えると一気に口座管理が重要になってくるという状況があり、ERP導入前にkyribaを導入してくださった例もあります。もっと裾野は広いと思っています。
日本企業に伝えたいことを教えてください
小松氏:日本において財務分野への投資はとても遅れていて、財務部門の方は戦える武器を持たない状態で日々仕事をしているように見えます。私は財務部門の方にもちゃんと戦える武器を持っていただきたい。
会計分野はいくら洗練されても、株価には影響しても収益には影響を与えません。しかし財務は、稼いだお金を賢く使うという部分に改善の余地がまだまだあり、ここにこそ日本企業の成長の差別化の余地が相当あるのではないかと考えています。
早稲田大学ビジネススクールの西山教授は、10億稼ぐのと10億賢く節税するのは同じ効果だと言っていました。外資系にはTAXの専門家は多いのに、日本の財務部門に税の専門家はほとんどいない。もっとそこを強化するだけでも、稼いだお金を有効に使える。私もそう思っています。
日本企業は内部留保が多い傾向がありますが、株主も財務知識を持ち、どれだけ正しい投資をして増やしているのかをもっと見て、指摘することが必要でしょう。本当のCFOを育成するには外部のプレッシャーを感じ、どう使うのが正しいのかを考える機会がなければなりません。経営会議で積極的に発言する立場になることのお手伝いをわれわれができれば嬉しいですね。